医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第31回】

血液への適合性とは?
血液への適合性とは?
生体は固体と液体で構成されていますが、液体成分は、体重の60%をも占めるそうです。そして、液体は細胞内と細胞外に分かれて分布し、その比は2:1です。細胞外液には細胞/組織間液があり、残る8%程度が血液、リンパ液、脳脊髄液です。リンパ液は組織間液が合わさったもので、その組織間液は血液が供給しており、組織へ栄養を送るとともに老廃物を排泄する経路でもあります。血液は体重の1/13あると言われます。成人の体重を60 kgとすると、4.6 kgです。比重は1に近いため4.6 Lと考えていただいてよいかと思います。
血液の機能としては、①物質(栄養/老廃物)の輸送と、②免疫という働きが挙げられます。栄養の輸送という観点では、赤血球は酸素や二酸化炭素を、血漿は二酸化炭素、栄養分や老廃物を運搬します。免疫を担当しているのは白血球です。他の臓器も生命活動に欠かざるものですが、こと血液については、すべての臓器の栄養や老廃物の運搬という重責があります。もし、脳への血流が何らかの理由で止まってしまうと10~15秒で意識がなくなり、5分程度で延命率が25%くらいまで低下するそうです。このように、生命活動の要とも言えるのが血液であり、血液の1/2以上、つまり60 kgの人で2 L超を失っても生命活動に大きな影響を生じるとされていますので、出血してもなんとかして止血しようとする機能も発達しています。ちなみにふつうの手指の出血では、赤黒い血液が浸出しますが、これは毛細血管が破綻して漏出した血液です。もう少し深い傷を負ってもおおよそは同じ色の出血があると思います。以前、私は人差し指の第二関節を強くぶつけて損傷したことがあるのですが、その際、明るく真っ赤な血液が5~6 cmくらい高さまで心臓の拍動に合わせて噴出し続けました。このような出血が動脈血からの出血で、圧が高いため、出血量も多量になってしまいます(ご自身がもしそのような状態となるか、隣り合わせた際は、心臓に近い側を布や紐などで思い切りしばって動脈を圧迫し続けると、細い動脈であれば止血機能が働いて、圧迫を解除しても出血が止まります。止血部位から下流の組織は脳でなければ数時間は血流がなくても大丈夫です。現に私の指はふつうに動いていますので。)。
血液の成分は、上述した赤血球、白血球、血漿と止血の役割を有する血小板で構成されています。まずは、血液がこのような大切な臓器であるということを再認識いただければと存じます。
なお、血液は、心臓、動脈、毛細血管、静脈という心臓血管系のパイプの中を通過して機能しており、動脈は心臓の強い圧力に耐えられる厚さと柔軟性が必要で、静脈は薄いものの確実に心臓に血液を戻すための逆流防止弁がついています。ただ、あくまでも心臓血管系はポンプとパイプ役であり、その中を通る血液とは別物と考えておいてください。
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