医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第24回】

全身毒性の用量反応性と閾値について。
全身毒性の用量反応性と閾値
「薬も過ぎれば毒となる」、「毒薬変じて薬となる」、「毒にも薬にもならぬ」など、薬と毒に関することわざがありますが、ここに挙げた3つは、いずれも用量反応性や薬効と毒性の関連を述べたものです。
量が増えると反応も増強するというのが、一般的な用量反応性です。また、たいていの場合、一定量までは反応しないレベルがあり、それを閾値と言います。
毒性反応を考えると、あるレベルまでは何ともなかったが、それを超えると何らかの毒性反応が現れるか、一部が死亡するなどの有害作用が現れます。そして、量が増えるにしたがって、その反応が増強し、様々な反応が生じたり、毒性反応を示す割合や死亡が増加するというのが、用量反応性という現象です(「第4回 過ぎたるは及ばざるがごとし」参照)。
毒性反応の究極は「死」です。死を毒性反応としてその数を縦軸に、横軸を用量として、用量反応関係を描くことが、以前は度々行われてきました。LD50という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。Lethal dose 50%の略で、半数致死量や50%致死量とも呼ばれます。この値の求め方としては、主にマウスやラットなどのげっ歯類を1群10匹程度の群に分け、その群ごとに投与用量を設定して投与し、投与後14日以内の各群の死亡数をカウントして、そのデータからプロビット法など統計学的手法を用いて算出するというものです。群数は多いときには10群近くになり、雌雄で試験するので、200匹程度の動物が必要となるような試験です。私も若いときにはさんざん試験を実施しましたが、とても動物福祉の観点から許容できるとは言えない数の動物を用います。年に一度の施設の動物慰霊祭では、心の中で申し訳ありません、成仏してくださいと祈っておりました。
最近では、LD50値が、2000 mg/kg体重以上であれば、急性毒性はないとみなすということが一般化しましたので、ほとんどこのようなフルのLD 50試験は実施されていないと思います。
ただ、このLD50値は、致死毒性の強弱を示すのにはわかりやすい数字です。
参考として、いくつかの物質のLD50値を下表にお示しします。
物質名 | LD50値(mg/kg体重) |
---|---|
ボツリヌスト菌毒素(A型) | 0.00000037 |
シアン化カリウム(青酸カリ) | 3~7 |
塩化ナトリウム | 3000~3500 |
エチルアルコール | 7000 |
ビタミンC | 12000 |
砂糖 | 29700 |
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