薬機法改正 変革期か改革期か【第4回】

2021/02/19 医療機器

●要旨
  医療製品の開発のスタイルに変化が生まれています。全く新しい、最先端の技術を用いることだけでなく、医療に必要なものは何かを見つめる必要があります。課題の解決には、流通など仕組みを変えることが有効な時もあるでしょう。仕組みを作ることは大事な鍵です。そして、私たちの気持ちに対するアプローチも行動変容のために大切な手段です。
 
はじめに 医療の問題をよく観察する
 医療製品の開発において、これまでにない動きが見られます。単に探索するのではなく、人間中心主義のデザインで効率化する、柔軟な開発ができるベンチャー企業をパートナーにする、などがあります。よく見ていると、医療、健康、福祉に関する問題は、先端医療に関するものだけではないことがわかります。新技術を生み出すだけが医療の解決ではないのです。また、新しい製品だから良いとは限りませんし、優れたものでも届かなければ役に立たないのです。

1 Covid-19対応と人工呼吸器から学ぶこと

 新型コロナウィルス感染症(Covid-19)の急激な拡大の中で、人工呼吸器の供給は大きな課題となりました。人工呼吸器については、国産品が少なく、輸入に頼っている現状があり、国内生産について強い関心が向きました。このことは日本だけでなく、外国でも大事な課題でした。人工呼吸器の生産に伴い、製造業などの特例的な取り扱いのほか、優先的な承認審査の対応などが行われています。また、本来であれば、単回使用である人工呼吸器の回路等の供給にも大きな問題があり、特例的な扱いについて厚生労働省から通知されています。

 ここで、気がついておきたいのは、どんな人工呼吸器が必要か、です。今まであるものでどうにかなるのか、全く新しい治療が実現できる新しいタイプの人工呼吸器を作る必要があるのか、冷静な分析が必要です。治療戦略をじっくりと理解しておかなければなりません。また、疾病のステージのどこに対応するかも大事です。

 医療製品の新規性の大きさは、開発時間や審査時間に対して大きな影響をもたらします。新規性が高いほど、評価すべきことは増え、審査も複雑化します。したがって、実際に使われるようになるまで時間がかかってしまうのが現実です。その間、患者さんは待つことができるでしょうか。医療へのアクセスとのバランス感覚は、最近の薬機法改正の背景にある大事なテーマです。

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執筆者について

吉川 典子

経歴 特定非営利活動法人医工連携推進機構 客員研究員 医工連携コーディネータ協議会会員
大阪大学大学院薬学研究科博士前期課程にて生物学的人工肝臓をテーマに研究を行った後、製薬会社に入社し、開発企画実務を経験。兵庫県庁薬務課を皮切りに、保健衛生行政に携わる。政策研究などの経験も多い。医療機器センター調査部(PMDAの前身)にて、審査行政に関与。先端医療振興財団にて、振興業務に従事。神戸大学大学院医学研究科にて、プロジェクト支援を行った。また、各地の振興組織、大学研究機関での支援を長年行っており、医療従事者の目線を活かしたコラボ、参入促進や新規性の高い医療技術への支援に強みがある。
デザインに強い関心があり、京都造形芸術大学に在学中。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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