GCP入門【第6回】

2020/06/05 臨床(GCP)

GCP省令の改正履歴
 毎年のように一部改正が行われているGCP省令とその関連通知の変遷を2回にわたって紹介してきた。続いて今回は現時点(2020年6月)における最新のGCP省令とGCPガイダンスについて紹介する。

14)    平成29年10月26日、厚生労働省令第116号
 「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令等の一部を改正する省令」、すなわちGPSP省令の改正に伴って、GCP省令の該当部分の条文番号が変わったことによる一部改正である。それ以外の部分の改正は無い。この「・・・に関する省令等の・・・」の「等」に医薬品GCP省令、医療機器GCP省令、再生医療等製品GCP省令が含まれる。2020年6月時点で最新のGCP省令である。

15)    令和元年7月5日、薬生薬審発0705 第3号
 ICH E6(R1)が改定され、ICH E6(R2)になり、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準のガイドラインの補遺」が取りまとめられたこと、そして平成24年のGCPガイダンス改正以降に行われたGCP省令の改正等を踏まえたことによる改正。これが2020年6月の現時点において最新のGCPガイダンスである。以下にICH E6(R2)を含めて、少し詳しく解説しよう。

ICH E6(R2)とQuality
 1996年に合意されたICH E6(R1) では、倫理に関して「ヘルシンキ宣言」が盛り込まれていることは周知のことである。その一方で「ISO9000」という言葉は使用されてはいなかったものの、「品質システム」の構築とその監査という、明白に「品質保証」のグローバルスタンダードであるISO9000シリーズの影響が垣間見えていた。このあたりについてはGCP入門【第3回】で紹介した。しかし、「品質システム」とは何か、そもそも「品質保証」とは何かということは、ICH-GCP の中では漠然と語られているだけだった。これが、ようやく2016年11月のICH大阪会議でICH E6がStep 4、すなわちICH E6(R2)となったことによって、治験の各過程においてQMSの実装が求められることになったのである。
 そもそもICH E6をなぜ改定する必要があったのかというと、開発拠点や規模が拡大しコストが増加してきたこと、品質に関する考え方が変化し新たな概念が生まれたこと、技術革新(特にIT発展による電磁的記録の活用)が行われてきたことなどが、改定の背景として挙げられている。
 そのために、品質マネジメントに係る考え方(特にリスクベースアプローチ)を整理し、モニタリングに係る考え方(リスクベースモニタリング、中央モニタリング等)を整理することによって医薬品の開発過程の効率化を目指した。さらに、既存概念(電子システム・原資料、必須文書管理、委託業務の監督責任、等)において要件を明確化することによって技術革新や複雑化への対応をも目指したのである。

GCPガイダンスの改正と関連通知
 このように品質管理(Quality Control)及び品質保証(Quality Assurance)を包括する概念である品質マネジメント(Quality Management)や、リスクに基づくモニタリングに係る記載がICH E6(R2)、すなわちICH-GCPに盛り込まれたことなどに伴ってGCPガイダンスが改正されたのである。
 令和元年7月5日の課長通知をもとに、改正点をいくつか具体的に紹介しよう。治験の被験者保護及び治験結果の信頼性確保のために必要不可欠な局面の質を保証するためのシステムを運用することとした。これには、①治験の全ての過程において品質マネジメントのためのシステムを履行し、②被験者保護及び治験結果の信頼性確保に必要不可欠な活動に重点的に取り組むこと、さらに③治験の品質保証及び品質管理のために使用する方法は治験固有のリスク及び収集する情報の重要性に対して釣り合いの取れたものとすべきであることを明確化した。
 モニタリングの実施に当たっては、①リスクに基づく取組を策定すべきであること、②適切なモニタリング方法の選択が可能であること及び選択したモニタリング戦略の根拠を文書化すべきであることを示した。
 また、電子データ処理システムのシステムバリデーションはリスク評価に基づいて行うことや、全てのデータについてデータの完全性を保証することとした。
 このように、品質マネジメント、リスクベースモニタリング、システムバリデーション、データの完全性(Data Integrity)の他、保証付き複写(Certified Copy)、モニタリング計画書(Monitoring Plan)などの新しい用語が用いられ、定義付けされた。
 GCPガイダンスの改正に伴って、品質マネジメントとリスクベースモニタリングの基本的な考え方について、それぞれ取りまとめられ、GCPガイダンスと同日(令和元年7月5日)付で通知された。すなわち、「治験における品質マネジメントに関する基本的考え方について」(薬生薬審発0705第5号)と「リスクに基づくモニタリングに関する基本的考え方について」(薬生薬審発0705第7号)である。さらに「治験に係る文書又は記録について」の事務連絡もやはり同日付けで発出された。

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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