【第8回、最終回】治験に係るベンダーの要件調査

2024/12/06 臨床(GCP)

今回は外部倉庫とEDCベンダー、被験者登録センター、治験薬割付け業者の要件調査、印刷業者、翻訳・通訳業者について。

 今回は外部倉庫とEDCベンダー、さらに被験者登録センターと治験薬割付け業者の要件調査について紹介し、さらに通常はベンダー調査の対象とはしないことが多い印刷業者と翻訳・通訳業者についても触れる。これで治験に係るベンダーの要件調査の方法を一通り紹介したので、今回をもって本シリーズを終了することにしよう。

資料保管会社の調査
 治験依頼者と実施医療機関との間で授受される文書、いわゆる治験関連文書を書面(紙)ではなく、電磁的記録として保存されることが近年では一般的である。さらにこの電磁的な治験関連文書はクラウドストレージを利用して双方で共有し閲覧することも通常行われてきている。そうは言っても紙資料は依然として多く存在することは間違いなく、これらの紙資料、時にはCD-Rやマイクロフィルムなので電磁媒体の保存を、資料保管を専門とするベンダー、いわゆる外部倉庫に委託することが今でも多く行われているところである。
 資料保管会社に対する要件調査は、下記の内容を盛り込んだ要件調査票を作成して施設に送付し、回答を得た後に必要に応じて施設を訪問する。GLP体制を整えて運営管理者と資料保存責任者を設置している資料保管会社もある。また、地盤が強固な立地に施設を建設し、侵入や盗難を防ぐために看板表示を行わないなどのセキュリティー対策を講じている施設もある。このような独特な対応を自由記載できるような欄を要件調査票に設け、あるいはインタビューやツアーで実地に確認することが必要である。
① 基本情報
 – 会社名、所在地、設立年月、資本金、主要株主、年間売上高、事業所所在地、従業員数
 – GLP体制、GMP体制
② 許認可
 – 倉庫事業許認可(登録)、倉庫管理主任者の選任
③ 保管可能な記録媒体
 – 紙、CD-R、マイクロフィルム等
④ 保管施設及びセキュリティー
 – 耐震耐火構造、施設周辺の地盤
 – 施設内外の警備体制、警備会社との契約状況、自衛消防隊の設置
 – 温湿度管理方法(記録媒体に応じた方法、設定状況)
 – 停電対策(自家発電、二系統給電)
 – 自然災害対策
 – ペストコントロール
⑤ 地震対策
 – キャビネット・ラックの固定
 – キャビネット内の仕切り等の利用
⑥ 資料閲覧の方法
 – 訪問閲覧(受付時間帯、申請方法)
⑦ 廃棄
 – 方法(溶解、焼却、細断等)
 – 廃棄証明書の発行

 

 

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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