【第4回】治験に係るベンダーの要件調査
前回はCROとSMOの要件調査票の記載内容について紹介した。今回はCROとSMOへの訪問調査について紹介しよう。
CROへの訪問による要件調査
過去の委託経験などから数社のCROに委託内容を打診し、受託可能な業務範囲であるCROと秘密保持契約を締結する。その後、前回紹介した要件調査票(チェックリスト)を送付し2週間前後で回答の返送を依頼する。その回答内容を精査し、委託予定業務及び回答内容によっては、それをもって委託の可否を決定することもある。さらに詳細を調査する必要があれば、CROを訪問してSOPなどの資料の閲覧、モニターなどの担当者へのインタビュー、資料保管施設などのツアーを行う(図1)。
CROと日程調整を行った後に、あるいは日程調整と並行して、調査実施通知書(アジェンダ)を提出する。アジェンダの内容としては、調査目的、調査担当者(人数)、調査対象の資料や施設、立ち合いを求めるCROの担当者、そしてスケジュールを大まかでよいが記載する。
CROを訪問調査する際の一般的なスケジュールや内容を紹介しよう。もちろん委託予定の業務によって大きく異なり、また外資系と内資系の治験依頼者でも大きく異なるのが通常である。外資と内資のCROにおいて、数多くの治験依頼者からの調査に対応した筆者の経験を基に、あくまでも一般的な調査方法と内容を紹介することとしよう。
調査日程としては、内資の中小の治験依頼者であれば2-3人で半日(3-4時間程度)、大手の治験依頼者であれば3人前後で1日、外資系企業であれば1人で2日程度といったところであろうか。要件調査票の内容も内資系企業では2-3枚の記載だが、外資系企業では10枚近くというように内資と外資で異なる。調査担当者については本シリーズの【第2回】で紹介したように、監査経験のある担当者のほうが良く、通常は委託予定業務の責任者と監査担当者で調査を行うことが多い。
出席者の名刺交換と挨拶のあと、治験依頼者側の調査担当者が調査の目的と調査スケジュールを述べ、CROの担当者による会社概要のプレゼンテーションで調査が始まる(図2)。会社概要の説明は営業担当者がスライドを用いて説明することが多く、その内容はCROのホームページに記載されたものとほぼ同様と考えてよいだろう。さらに、ホームページには載っていない受託実績の詳細やGCP組織図を基にした各部門の担当者の数などの説明もある。もちろん、質疑応答は随時可能だ。
委託予定業務に関する調査内容については、専門部署の担当者に説明を求めることになるので、当然のことながら上記のアジェンダには、例えばモニタリングの責任者に説明を求める旨の記載が必要となる。最初の営業担当者等によるプレゼンテーションと、専門部署の担当者によるプレゼンテーションでは、主に組織体制と、それを構成する担当者や責任者に関して確認する。
全般的なプレゼンテーションの後で、資料の閲覧、担当者へのインタビュー、施設設備のツアーによる調査を行う。閲覧の必要な資料としては、まずSOPが必須であろう(図3)。実際に使うSOPが治験依頼者とCROとで協議して作成する、いわゆる「すり合わせSOP」であったとしても、CROが独自に作成したSOPの閲覧を求める。この場合、委託予定のない業務のSOPは基本的に閲覧を求めない。例えば、モニタリングのみを委託予定であるにも関わらずデータマネジメントや統計解析のSOPを閲覧することはない。仮に閲覧を求めてもCROは拒否するかもしれない。
予定する治験の概要をあらかじめCROが把握している場合は、治験にアサイン予定の担当者、例えば担当モニターが決まっているのであれば、当該モニターのCV(履歴書)と教育訓練記録の閲覧を求める。モニターがまだ決まっていないのであれば、モニタリング責任者のCVと教育訓練記録でも良いかもしれない。外資系企業ではJob Descriptionを作成することが多いことから、外資系の治験依頼者による要件調査では、CV、Training Record、Job Descriptionの3点を確認することが多く、外資系のCROではこの3点が揃っているが内資系CROでは前2点だけの閲覧になることもある。
これらを閲覧する目的としては、担当者の要件(知識、教育、経験等)がSOPやJob Descriptionで求められているかどうか、その要件に合った知識や経験を有し教育訓練を行っているかどうかを確認することにある。なお、モニターの要件はモニタリング手順書に、監査担当者の要件は監査手順書にそれぞれ記載することがGCP省令で求められているが、ICH-GCPではモニターも監査担当者も要件は「should be documented」なので、外資系CROでは手順書ではなくJob Descriptionに要件を記載することがある。その他のデータマネジメントや統計解析などの担当者の要件に関する記載は、GCPには明確には記載されていない。しかし、治験依頼者は「専門的知識を有する者」を確保しなければならないとされていることから、専門的知識を有する者であることをCVと教育訓練記録で確認する必要がある。
提示された資料を閲覧するために、CRO担当者は会議室から一旦退室して治験依頼者の調査担当者だけで2時間程度閲覧し、その後でCRO担当者に質疑応答ということが多い。一方で、資料閲覧時にCROの担当者が同席のうえで随時、資料の提示と質疑応答を繰り返しながら進めることもある。
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