「造粒とは」【第2回】
はじめに
原薬には、凝集性の高い薬物、水に溶けにくい薬物、油状の薬物などがあり、これらの薬物を含む粉体を造粒する場合、予め薬物を改質する必要がある。筆者は、凝集性の高いエテンザミド(ETZ)を含有した口腔内崩壊錠の製剤化において、結晶乳糖を核として、この表面にETZを均一に粉末コーティングする目的で、予めETZを軽質無水ケイ酸で表面改質した。このように凝集性の高い薬物では、予め、軽質無水ケイ酸などを用いて表面改質することによって、含量均一性などを改善することができる。
【第2回】は、原薬物性の改質、原薬物性と造粒法、湿式造粒法における最適結合液量および打錠用造粒物の粒度について、筆者の経験をもとに解説する。
1.原薬物性の改質
1.1 難溶性薬物の改質
難溶性薬物では、原薬の微粒子化、親水性高分子を結合剤として造粒、β―シクロデキストリン(β-CyD)による包接化、親水性高分子を用いて固体分散体とすることなどによって、製剤からの薬物の溶出を改善する。難溶性のカルシウム拮抗薬ニフェジピンを水溶性高分子ポリビニルピロリドン(PVP)で固体分散体とした。固体分散体(固溶体)は難溶性薬物を水溶性高分子と共に、溶解し、その溶媒を留去することによって、水溶性高分子中に難溶性薬物が分散した状態となる。これを難溶性薬物の固溶体という。固溶体は、非晶質体で調製直後は速やかに溶解した。しかし、ニフェジピンの溶出速度は、保存時間の延長に伴って著しく低下した。これは、加温・加湿下(60℃、75%R.H.)での保存により吸湿し、固溶体中のニフェジピンが徐々に結晶化し、大きな結晶に成長することが原因と考えられる。一方、ニフェジピンを水溶性のβ-CyD誘導体(2-hydroxypropyl-β-CyD(HP-β-CyD))と重量比1:4での噴霧乾燥により非晶質性固溶体を形成した複合体の溶解速度では、保存時間の延長よる溶解速度の低下はほとんど観察されなかった1)。
1.2 油状性薬物の改質2)
油状性薬物では、担持させた添加剤から滲み出し、打錠障害を引き起こすなどの問題が生じる。そこで川嶋らは、油状性薬物の固形製剤の製造方法を開発するために、吸油能試験により、油状性薬物の吸着効率の高い添加剤の探索を行った。
油状性薬物としてビタミンEを用い、吸油能試験(JIS K 5010)に準じて行った。試料2gを100mLのビーカーに入れ、油状性薬物を少量ずつ試料中央に滴下した。その都度全体をスパーテルで、十分に練り合わせた。塊状になった点を終点とし、吸油量を測定した。試料はセオラス6種、フローライト、アエロジルを使用した。所定質量の添加剤に対するビタミンEの最大吸油量の結果を表1に示した。
表1 各種添加剤の油状性薬物に対する吸油能
本表は、川嶋嘉明ら「油状サプリメントの粉末化と錠剤化による保存安定性と機能性向上に関する研究」日本食品化学研究振興財団 第14回研究成果報告書,123-128P(2008)の表2.吸油能試験結果(125P)を基に作成した。
この結果、フローライトの吸油能が他の添加剤に比べ著しく高い値を示した。同様のシリカ系添加剤であるアエロジルは、油状性薬物を担持する能力がフローライトよりも低い結果となった。また、セルロース系の添加剤については、粒子表面に細孔を有しているセオラスKG-1000が他のセオラスよりも高い吸油能を有していた。
つまり、油状性薬物の担持には粒子の構造が最も重要なファクターであり、ケイ酸カルシウムを処理することで多孔質構造としたフローライトの粒子が高い吸油能を示すことが明らかとなった。
1.3 凝集性薬物の改質3)
エテンザミド(ETZ)は、凝集性の高い薬物である。予め、ETZを軽質無水ケイ酸で表面処理することによって、ETZの凝集性を改善した。この表面処理したETZを用いて、賦形薬と共に、造粒し、顆粒とした。
次の図1は原薬ETZと表面処理によって、凝集したETZが分散している状態の走査型電子顕微鏡の写真である。左図は原薬ETZで凝集がみられる、右図に表面処理剤として軽質無水ケイ酸(アエロジル200)を用い、これを0.5%添加・処理した表面処理ETZでETZの凝集が分散している状態が確認できる。
図1 エテンザミドの電子顕微鏡写真
本図は、阪本光男ら「口腔内速崩壊錠の開発(Ⅱ)」薬剤学,69,No.4,297-306P(2009)
のFig.1. Scanning Electron Micrographs of Ethenzamide Powder(300P)を転載した。
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