医薬原薬の製造【第29回】
序
通常蒸発缶
先に紹介した例のシステムについて計算してみます。この例では、蒸発釜残成分の抜き出しを無視しています。それぞれの記号の意味は以下です。
Tw : 加熱蒸気の凝縮水の最終温度、30℃と仮定します。
T0 : 濃縮溶液の供給温度(通常室温)、20℃とします。
Ts : 加熱蒸気の温度、0.4MPa蒸気で、144℃とします。
Cp : 定圧比熱(kJ/kg・K)、2.04
Cw : 水の比熱(kJ/kg・K)、4.19
Fs : 蒸気流量(kg/s)
F0 : 濃縮溶液の流量(kg/s)
g : 蒸発潜熱(kJ/kg)、2258
蒸気の失う熱量
濃縮溶液が得る熱量
上記二つの熱量が等しいことから、
多重効用缶
次に、同様の計算を3重効用缶のモデルについて計算してみます。
以下の仮定を置きます。
f=0 釜残溶液の抜き出しは無視します。
各塔からの蒸気発生量は一定で、F(kg/s)、3F=F0 とします。
Ts=144 (°C)
Tw=30 (°C)
T0=20 (°C)
T1=95 (°C), T2=85 (°C), T3=75 (°C)
蒸発潜熱γは温度依存性がなく一定とします
蒸気の失う熱量
濃縮溶液が得る熱量
上記二つの熱量が等しいことから、
前回、蒸気節約機器として、多重効用缶 (Multiple Effect Evaporator = MEE) 、機械式蒸気圧縮蒸発缶(Mechanical Vapor Recompression Evaporator = MVRE) を紹介しました。これらの、装置によってどの程度蒸気が節約できるのか、非常に大雑把な計算も述べました。今回は、これらの装置を運転する際、必要になる蒸気量を少し詳しく計算してみたいと思います。
通常蒸発缶
先に紹介した例のシステムについて計算してみます。この例では、蒸発釜残成分の抜き出しを無視しています。それぞれの記号の意味は以下です。
Tw : 加熱蒸気の凝縮水の最終温度、30℃と仮定します。
T0 : 濃縮溶液の供給温度(通常室温)、20℃とします。
Ts : 加熱蒸気の温度、0.4MPa蒸気で、144℃とします。
Cp : 定圧比熱(kJ/kg・K)、2.04
Cw : 水の比熱(kJ/kg・K)、4.19
Fs : 蒸気流量(kg/s)
F0 : 濃縮溶液の流量(kg/s)
g : 蒸発潜熱(kJ/kg)、2258
蒸気の失う熱量
濃縮溶液が得る熱量
上記二つの熱量が等しいことから、
数値の式を見ると、蒸発潜熱2258が、蒸気や水の顕熱に比べて10倍程度あることが分かります。また、顕熱項(分母が335.2、分子が89.76+293.3)も分母と分子がほとんど変わらないことが分かります。結局計算結果は、1に非常に近いことが分かります。つまり、蒸発させる水とほぼ同じ重量の水蒸気が必要ということです。
多重効用缶
次に、同様の計算を3重効用缶のモデルについて計算してみます。
以下の仮定を置きます。
f=0 釜残溶液の抜き出しは無視します。
各塔からの蒸気発生量は一定で、F(kg/s)、3F=F0 とします。
Ts=144 (°C)
Tw=30 (°C)
T0=20 (°C)
T1=95 (°C), T2=85 (°C), T3=75 (°C)
蒸発潜熱γは温度依存性がなく一定とします
蒸気の失う熱量
濃縮溶液が得る熱量
上記二つの熱量が等しいことから、
この計算から蒸気の必要量は、蒸発させる蒸気の量のほぼ1/3で良いことが分かります。ここでも、水の蒸発潜熱2258KJ/kgが大きいことから、顕熱項の寄与が小さいことが分かります。数値の式で、分母の89.76、293.3、分子の733.25が顕熱項になります。前項で述べましたように、このモデル系では、塔1で蒸発させた蒸気はT2℃=85℃で回収されます。また塔2で蒸発させた蒸気は、T3=75℃で回収されます。この熱が利用されていないことによって1/3より若干多めの蒸気が必要になってます。この廃熱を利用すればもう少し小さな値となります。
コメント
/
/
/
コメント