Investigating Out-of- Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production Guidance for Industry 医薬品製造における規格外(OOS)試験結果の調査に関する業界向けガイダンス【第1回】

 FDAのOOSガイダンスが2022年5月に改訂されました。大きな変更はなく、フルスケール調査がより詳しく説明されています。かつV.調査の終了/B.注意事項に追加があります。

 福井県の製造所の健康被害が起きたロットではOOSが出ていましたが、OOSの対応が不十分でした。明確なラボエラーが見いだせなかったのに、QCで試験をやり直したところ規格に入ったので、OOSをラボエラーと判断しました。そして再試験を行い規格に入ったので該当ロットを適合として出荷しました。製造工程の調査はありませんでした。

 明確なラボエラーが見つからなければフルスケール調査で製造工程を確認する必要がありました。製造記録を見れば、追加した原薬ロットNoに違う記号が記録されており、すぐに異変に気づくことができました。かつHPLCチャートに未知ピークがあるとの報告を受けていましたので、なおさらフルスケール調査を行う必要がありました。そうすれば、1ロットの廃棄で終わっていました。何よりも健康被害を引き起しませんでした。

 もう一つの視点がQA&QCの統計・確率の基礎能力不足です。規格に入っているから適合としましたが、そのデータは約1%の発生確率でした。t検定をすれば”高度に有意差有り”との判定になります。溶出試験の値は100万回に1回も起きないデータが起きていました。かつ含量が通常の値より2.4%低下しているのに溶出試験値が通常の値から約8%高かったのですが、これも規格内との判断で適合にして、問題に気付きませんでした。含量値が低下すれば溶出試験値が低下するのは、原理・原則から当然のことです。プラスマイナス約10%の原理・原則に反することが起きていました。 OOS/OOTの仕組みなどなくても、データを統計・確率の視点並びに原理・原則で見る力があれば問題に気付きます。逆にその力がなくても、OOS/OOTの仕組みがあり、それをしっかり運用していれば問題を発見できたのです。もちろん両方あれば鬼に金棒です。含量も溶出試験値にもOOTの設定はなかったようです。OOS/OOTの仕組みは視点を変えると統計・確率の基礎知識がなくてもデータの信頼性を確認する方法なのです。

 OOS報告がありましたので、QC長&QA長も確認されたと思いますが、問題点に気づくことがなかったようです。逸脱/OOS/変更管理/苦情の4点についてはしっかりと確認することなのですが、それができてなかったのか、気づく力がなかったのか、QC&QA出身者としてはとても残念でした。

 いくつかの会社でOOS/OOTの運用が不適切とのことで製品回収が行われています。PMDAの査察のポイントにもOOSとデータの取り扱いが挙げられています。他社の業務改善命令/第三者委員会の報告から、どのようなOOS/OOTの取り扱いが不適切と指摘されたかを学んで、より適切な運用をすることだと思います。過去問(自社&他社の失敗事例)から学びさらにより良い品質管理/品質保証を実践したいです

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