これからはじめるGMP入門【第2回】GMPとは何か-SISPQを意識する-
1.決して起こしてはいけない"間違い"
「クスリ」の反対は「リスク」。これは言葉遊びですが、効き目が高い医薬品ほど人体に強く作用します。それだけに、何か間違いがあれば、「毒」になってしまう危険性もはらんでいるといえるでしょう。
GMPは、このように医薬品に潜む危険性が顕在化した事件がきっかけとなり導入されました。皆さんはサリドマイド事件をご存じでしょうか。睡眠薬・鎮痛剤として開発されたサリドマイドは、1957年(ちょうど私の生まれた年です)から日本を含む世界の国々で発売されました。発売当初は、副作用が少なく安全な薬といわれたサリドマイド。しかし発売後、妊婦が服用すると胎児の手足に奇形を生じることが明らかになり、世界的な薬害事件となりました。この薬害はサリドマイドと構成成分は同一で構造は左右逆の鏡像の関係にある化合物、光学異性体が原因でした。サリドマイドの光学異性体の一方には鎮静・睡眠作用があり、もう一方には、思いもかけない催奇形性があったのです。1961年に薬害について報告されると、世界中でサリドマイドが回収されました。
この事件は、医薬品の安全性や有効性を確保することの重要性が見直されるきっかけとなりました。米国FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)では、薬事関連法規の大幅な改正が行われ、1963年には高品質な医薬品を製造するために必要な設備構造、生産管理、品質管等に関する基準が法制化されました。これが世界初のGMPです。さらに、1969年にはWHOがGMPを制定し、加盟国に対して医薬品貿易においてGMPに基づく証明制度を採用・実施するように勧告しました。
一方、日本では、1980年の薬事法改正に伴い、管理面における製造業者の遵守事項として「医薬品の製造管理及び品質管理規則」(GMP省令)が定められ、構造設備面に係る事項として「薬局等構造設備規則」(製造業の許可要件)が一部改正されました。その後、1994年に薬事法が改正され、GMP省令に適合することが製造業の要件となり、2005年の薬事法の改正ではこれが製造販売承認の要件となりました。
医薬品の製造がGMPに適ったものであるか。これは、行政による製造所(工場)のGMP適合性調査(査察)によって確認されます。尚、GMP適合性調査は5年毎にうけなければいけません(製造業者の製造所について、おおむね2年に1回はGMPの遵守状況を調査。5年で製造所全般を確認)。
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