GCP入門【第24回】

2021/12/03 臨床(GCP)

最終回として医療機器GCPと再生医療等製品GCPの改正について解説する。

この「GCP入門」は医薬品GCPの話が中心であったが、前回の「令和のGCP改正」の続きとして医療機器GCPと再生医療等製品GCPの改正についても簡単に紹介しよう。そして、昨年1月から始まりちょうど2年にわたってお読みいただいたこの「GCP入門」の総まとめを行って、2年間の連載を終了したい。

医療機器GCPと再生医療等製品GCPの改正
 令和元年7月に医薬品GCPガイダンスが改正され、これはICH E6(R2)がStep 4に進んだことに伴う改正だということを前回説明した。ICHは医薬品に関する会議なので医療機器は対象にならないことから、医療機器GCPガイダンスは令和元年7月には改正されていない。その後の省令とガイダンスについては、医薬品GCPと同様の理由及び日付でそれぞれ改正された。すなわち、医療機器GCPには品質マネジメントに関する記載が無い他は、医薬品GCPと基本的に同様の内容である。
 再生医療等製品GCP省令は、医薬品GCPや医療機器GCPと同様に令和2年に2度、令和3年に1度の改正があったが、ガイダンスは今まで発出されたことはなく、令和3年7月にガイダンスが初めて発出された。その内容は医薬品GCPガイダンスと全く同様の記載となり品質マネジメントに関しての記載もある。

GCP入門の総括
 ここからは「GCP入門」の総括として2年間の連載の復習と共に、伝え漏れていたことを記していきたい。

1)    GCP総論
 GCPは「Good Clinical Practice」の略であり「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」だということはもう十分に理解いただいたであろう。そして、GCPとは治験の遵守事項、すなわち医薬品の製造販売承認申請をするための臨床試験を行うルールだと覚えていただければ間違いない。
 1970年代以前は、わが国には治験に関する特別な法規制が無いまま治験が行われていたが、1979年(昭和54年)10月に薬事法第80条の2(治験の取扱い)が制定され、治験の依頼に際し遵守すべき基準が定められた。しかし現在の状況から見ると倫理的・科学的に十分といえるものではなかった。そこで平成元年10月に「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」が通知された。これを「旧GCP」と呼んでいた。
 ICHについては改めて述べることも無いであろう。ICH E6がICH-GCPであり、1996年(平成8年)にStep 4に進み、これを日本の医療環境と医療事情はもちろんのこと日本の規制要件に合わせるために検討した結果が、「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)の内容」(中央薬事審議会答申)として公表された。いわゆる「答申 GCP」である。
 答申 GCP が公表された 2週後に「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月27日、厚生省令第28号)が公布された。これがGCP省令だ。前述の旧GCPに対して「新GCP」と当時は呼んでいた。さらにGCP省令が公布された2か月後には、GCP省令の解説という位置付けの通知が発出された。これを「運用通知」とか「課長通知」と呼んでおり、現在のGCPガイダンスの前身である。

2)    GCP各論(第一章)
 第一章は総則であり、第1条(趣旨)、第2条(定義)、第3条(承認審査資料の基準)から構成されている。第1条のガイダンスには、治験の原則が14項目記載されており、ICH-GCPでの13項目より1つ多く、これは被験者に健康被害が生じた場合の補償に関した我が国独自の記載が追記されたからだ。ICH-GCPでもGCP省令でも、治験の原則の1番目に「ヘルシンキ宣言」という言葉が出てくる。

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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