再生医療等製品の品質保証についての雑感【第18回】

2020/10/09 再生医療

水谷 学

はじめに
 本稿では、現状の再生医療等製品製造における、無菌操作環境にて生じるリスクの考え方について、雑感を述べさせていただきます。一般的な無菌製品の製造方法は、「最終滅菌法による製造」と、「無菌操作法による製造」の2つがあります。両者の違いがどこにあるかと言えば、環境微生物管理(衛生管理)のコストが大きく異なることであると考えます。後者である再生医療等製品製造では、無菌操作を適切に実施することが何よりも重要ですが、現状においてどのようなリスクを想定しておくべきかについて、あらためて考えたいと考えます。


● 現状の再生医療等製品製造での無菌操作環境について考えてみる
 生きた細胞を原料、中間品、そして最終製品とする再生医療等製品では、原則として、原料から最終製品までの全ての工程群において厳密な無菌操作が求められます。しかしながら、2000年代において主流であったヒト体細胞由来製品の開発では、必ずしも医薬品と比べて十分な無菌保証が要求されているようには見えませんでした。理由として、患者の自己細胞由来製品などでは、原料の無菌性が保証できず、抗生剤等を併用した無菌的操作と無菌操作の組み合わせによって、最終製品の無菌性を個別に担保する製造体制が求められたことが挙げられます。これに対し、2010年代に入り、マスターセルバンクを有するES/iPS細胞を原料とした、ロットを形成する製品の開発が始まり、再生医療等製品の無菌保証のゴールが無菌医薬品製造の要求と重なることが理解され、医薬品製造とは異なる、煩雑かつ高度な無菌操作環境を構築・維持することの必要性が視野に入りました。再生医療等製品製造では、前者と後者において、製品の無菌保証体制に係る構築手順が異なることを念頭に、自社で開発する製品の特性を理解し、施設の運用設計を模索する必要があります。

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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