再生医療等製品の品質保証についての雑感【第15回】

2020/07/03 再生医療

水谷 学

はじめに
 本稿では、再生医療等製品を製造する施設(構造設備)について雑感を述べさせていただきます。
現状では、まだ商業生産用の構造設備、特にロットを構成する製品製造を目的としたものは非常に少なく、具体的な運用を想定した製造の例示は難しいです。そのため、GCTP省令に準じた構造設備は製品の無菌性確保の議論が先行していると考えています。


● 再生医療等製品製造の構造設備設計
 再生医療等製品製造では、医薬品製造と同様の無菌操作が実施できる場合や、自己由来組織など無菌性が担保できない原料を導入する場合など、無菌操作と最終製品の無菌性確保に関わる設計および手順が多様です。これに対し、GCTP省令の第10条(構造設備)あるいは薬局等構造設備規則に示される要件は、個別の製品における製造性には触れず、適切な衛生管理による「無菌操作」の実施により、最終製品において保証すべき無菌性を管理できることが前提となります。そのため、再生医療等製品製造での構造設備設計における無菌操作等区域は、医薬品製造の重要区域と相似であり、デフォルトでグレードA相当の環境が要求されます。また、無菌操作等区域を形成する設備の設置環境(清浄度管理区域)は、無菌操作等区域の独立性に応じ、人と物の動線を考慮して、グレードB~Dにて適切に設定されている必要があります。
 製品の無菌性確保を前提とした無菌環境の構築は、外因性の汚染に対する防除であり、構造設備設計の大前提となります。したがって、無菌環境を構築する区域の構築(清浄度ゾーニング)は、図2に示されるように、予め定められたレベルで管理可能な区域である、で成立する無菌操作等区域(ISOクラス5)および清浄度管理区域(ISOクラス7あるいは8)とその他の支援区域による区分管理と適切な更衣管理、そのために必要な差圧管理、風向管理、換気回数管理で構成される、バイオクリーンルームの設計となります。
 
図.構造設備における微粒子清浄度管理の概念

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

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