再生医療等製品の品質保証についての雑感【第14回】

2020/06/05 再生医療

水谷 学

はじめに
 本稿では、運用設計(マネジメントシステム)において、基本的な概念を説明し、その雑感を述べさせていただきます。前回で述べましたが、運用設計は原則として、製造できること、細胞を製品にする手順が確立されていることを前提にお話しを進めたいと考えています。したがって、ここから細胞製造性など、再生医療等製品固有のお話しは最小限であり、一般的な製造(医薬品等)と近似の内容となると考えております。釈迦に説法という感じの内容を多く含みそうで恐縮ですが、ご寛容の上お読みいただければ幸いです。


● 品質マネジメントシステムの考え方
 再生医療等製品の製造施設においては、製造において、均一の品質を有する製品を、安定して提供(生産)する責任があります。意図したアウトプット(設計通りの製品)を継続的に創出(製造)するためには、製造が再現性よく実施できる方法・手順および評価方法・手順をもとに、想定される生産計画(製品数)に対して、製造が適切に運用されるようにマネジメントシステムの上位概念(品質マニュアル、基準書)を定め、構造設備(清浄度、動線)の要求、原料等の調達、日常/定期的な点検あるいは清掃、指図・記録等の管理、および逸脱の処理手順などを決定し、そこに必要な数の職員とそれに伴う適切な教育訓練の計画をトップダウンで策定することが不可欠となります。
 定められた基準および手順では、組織の規定、製品の規格・基準、作業の運用手順といった順に、組織の体系に則した形で文書体系が構築されることが求められています。GCTP省令で求められる基準書は、衛生管理基準書、製造管理基準書、品質管理基準の三基準書であり、製造管理に必要な基準書のミニマムリクワイアメントは衛生管理基準書と製造管理基準書となりますが、組織が求める品質保証体制に合わせ、ユニークに基準書等やその階層を増減させることは必要があると考えます。再生医療等製品製造においては、既に述べたように最終製品から評価できる項目が限られており、全工程の履歴(製造記録および施設維持記録)が品質に直結するので、図に示すイメージのように、長期の製造期間や工程間の維持管理を目的とし、混入防止や、混同防止、交差汚染防止などをマネジメント可能な運用設計を想定し、その管理体制に従った文書体系を構築することは有用であると考えています。
 

図.  品質マネジメントシステムにおける製造管理と衛生管理の運用イメージ

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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