【第3回】東大松尾研発スタートアップ・AIを活用した品質保証業務

2024/10/18 製造システム

岸 尚希

製薬の品質保証においてどのようなAI活用が考えられるのか。

品質保証へのAI活用の道筋

1. はじめに
株式会社EQUES(えくえす)CEOの岸です。
前回は、AIや機械学習、大規模言語モデルがどういったものなのかについてご紹介させていただきました。今回は、製薬の品質保証においてどのようなAI活用が考えられるのかについての記事を書かせていただきます。

2. 品質保証業務で役立つAI活用例
今回は、AIの中でも特に「大規模言語モデル」に絞った活用方法をご紹介します。
a.   文書の作成
まずは文書の作成の自動化です。世の中でもよく知られている「ChatGPT」は、投げかけた質問に自然な回答ができるチャットボットのようなものになっています。この特徴を生かすことで、質問応答に限らない多様な文章を自動生成することができます。具体的に、「メールで担当者変更の挨拶の文面を作ってほしい」といった指示を与えることから、「以下のメモの内容を申請書の形式でまとめてほしい」といった指示と簡潔なメモから申請書の文書を生成することまでできるようになります。このように、大規模言語モデルの入力の仕方を工夫することで、出力される文章を調整しようとする技術を「プロンプトエンジニアリング」と呼び、性能の高い大規模言語モデルを、自分の実現したいこと・生成したい文章に合わせてチューニングすることができます。これらの技術を活用することで、変更文書・逸脱文書を始めとした品質保証に関わる文書の作成の効率化につながります。
b.   文書のレビュー
大規模言語モデルを活用すると、文書の生成だけではなく、文書のレビューもAIで行えるようになる可能性があります。例えば、先ほど紹介した「プロンプトエンジニアリング」を元に、文書の内容とチェック項目をAIに入力することで、チェック項目に応じたレビュー結果をAIに生成してもらうことができます。ここで、レビューの精度を高めるためには、レビューの判断基準も合わせてAIに教えてあげる必要があります。例えば、文書の中に間違いが含まれているかどうかをレビューするとき、「数値の有効数字が違う場合は間違いとみなすのか」「別の文書と表記は違うが意味が通っているものは間違いみなすのか」といった間違いレビューの判断基準を、数値や表記の具体例と合わせてAIに教えることで、レビューの精度が高くなります。そのため、AIを使って自動でレビューをしてもらおうとする前に、レビューの項目や判断基準を言語化して整理することが重要になります。

 

 

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執筆者について

岸 尚希

経歴

株式会社EQUES 代表取締役 CEO
東京大学大学院情報理工学研究科。元松尾研究所プロジェクトマネジャー。松尾研起業クエスト1期生。松尾研究所チーフAIエンジニアとして企業との共同研究に従事。その後、現実世界と情報学の融合を志し、東京大学工学部計数工学科在学時にEQUESを創業。専門はシステム情報学、特にテラヘルツ波通信とハプティクス(触覚技術)。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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