医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第48回】
国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本国内製薬企業に求められている国際的安全管理とは」
1.はじめに
製薬企業の国際化多様化が進む中、国際社会は日本国内企業の多様性対応が大変な遅れを取っていることをよく知っています。又、日本の製薬企業工場でも国際化多様化が求められていることは周知の事実です。当面の課題は遅れを取り戻すことですね。そんな中、容赦なく人身事故は発生します。日本の製薬工場が世界中のサプライチェーンを巻き込んで構築すべき安全管理リスクマネジメントが人身事故発生リスクを低減し、安全管理効率を高めることをお話ししたいと思います。先ずは安全教育を定期的にプログラムに組んで安全に対する意識レベルを徐々に高めてゆく努力をせねばなりません。「日々の安全活動」とかねてから呼ばれている活動です。例えば4月は人事異動、新入社員、中途社員、派遣社員や出向社員などのサプライチェーンを取り込んで、新しい慣れない職場で働き始める人たちに安全と健康に対する意識を高める教育プログラムを計画せねばなりません。近年は製薬工場の現場で働く従業員を即戦力で募集している企業があります。この工場で機械を動かすKnow Howを知っているから、採用して即現場に入れる等、十分な安全教育もせずに慣れない仕事につかせるのでは無く、現場実務は安全から学ぶ事の重要性を会社の文化として
周知してもらう事が重要です。会社を信頼して仕事をする従業員の仕事は1日や2日で収束する物では無く信頼という企業価値を学んだ社員さんや従業員さんそして、サプライチェーンの従業員さんのこれからの仕事に対する取り組み度が違ってくるものと思います。
国際化・多様化が進む中、製薬企業各社はこの安全管理活動をタイムリーに図り、事業活動に影響が出ることの無きようHSEを学び、社内にGlobal Standardの導入を図ることが求められています。
然しながら、GMPのように法律規制ではない為、後回しになっていて、どのように取り組めばよいのか解らないでいる内に時間が経ち手遅れになっていることに気がついておられない製薬企業が多く存在してしまっているのが現状のようです。
そこで、筆者は“何をどのように誰が”進めればよいのかについてきっかけを知って頂きたいと考えています。これにより、社会の国際化・多様化に医薬品工場の安全管理対応できる企業となるための課題を明確にしていただく為のお手伝いが出来るものと考えています。今回は国際的なリスクアセスメントの基礎を学んで頂きたいと考えています。
2.製薬工場のあるべき姿
医薬品工場の安全管理運用
医薬品工場ではGMPとHSEは生産業務管理上の両輪
GMPが守るのは患者様
そのためにコンタミ防止他を徹底的に法に従い実施
HSEが守るのは製薬工場のサプライチェーンも含めたさ従業員の皆さん
サプライチェーンも含めた従業員の皆さんの作業場所について安全管理、作業姿勢、曝露管理等についてリスクマネジメントを行いリスク低減対策を繰り返し行う事が必要です。
また日々の安全活動を定着させ、毎朝作業前KY(危険予知活動)を行って、安全のみならず曝露リスクや危険物・化学物質など今日の仕事にどのような危険が潜んでいるか少人数のグループで意見を出し合い、どのような対策をして作業を開始するかを共有する。そして、最重要ポイントをグループで話し合い、決定共有化し、最重要ポイントとゼロ災コールを行ってからリーダーは作業開始指示を出す。ちなみにゼロ災コールとは「ゼロ災でいこう ヨシ!!」とグループ全員で指差呼称(円陣を組んで全員の左手を重ねそこに右手で人差し指を指し、指を号令と同時に指を振り下ろす)を3階繰り返す事でこれから行う作業の重要危険ポイントを頭に記憶させた上で最重要危険ポイントのリスクを即座に低減する手法を定着させる事が一つのリスク低減対策として一般に定着していますがマンネリ化しない工夫をして行う事が重要です。その他のリスク低減対策項目は以下の通りです。
<HSE関連リスク低減対策の必要な作業>
- 安全作業リスク
- パソコン操作姿勢(Ergonomics人間工学)リスク
- 重量物運搬(Ergonomics人間工学)リスク
- 化学物質や原薬の暴露による有害性と健康被害リスク
- 火災リスク
- 環境リスク
- 自然災害リスク(地震・台風・津波・洪水他)
- 人的災害リスク(サイバー攻撃・テロ・爆弾攻撃他)
- 自動車事故リスク
上記の作業リスク以外にも多数の作業リスクが存在しています。
3.国内医薬品工場の現状
しかし、医薬品工場が国際競争にさらされる中、国内工場ではGMPと比較するとHSE(健康・安全・環境)はあまり導入が進んでいませんでした。
理由:日本の行政がHSE(健康・安全・環境)という組織で活動していない為、行政はHとSとEがそれぞれで運用している。従って、国内企業の工場はHSEグローバルスタンダードを持っていないのではないでしょうか。あまり必要を感じていなかったことで導入が進んでいなかったと思います。又、日本国内の安全管理グローバルスタンダードによる国際化の現状は
世界中に工場を20年、30年以上持っている製薬企業は既に苦い経験を積み重ねてその結果Global Standardを作成し各国事業所にて継続教育を行い、現地のあるいは多種多様な国民の理解が得られるよう周到な準備をして事業を着実に進めてきています。
そして、その内容までもGlobal Standardの一つに盛り込み理解の得られる環境を作り上げています。
しかし乍ら、日本国内の多数の国内製薬企業は従前の社内規則や日本国の法律に適合することが最大限の対応と誤解されているようです。国際化多様化とはほど遠い既存の国内のみ通用するスタンダードで運用されています。
その結果、言葉の通じない外国人従業員の方々や日本の方々でも健康被害リスクや怪我事故のリスクにさらされて働いていることになります。ましてやサプライチェーンの従業員の安全管理が充実しているとは言いがたい現状ですね。さらに、責任の所在も不鮮明なスタンダードのようです。国際化多様化の中でHSEのグローバルスタンダードが他国の従業員向けに従業員の自国語と英語を併記する事などは当然出来ていない日本の医薬品工場が多いことが課題となっています。日本の製薬工場に欠けているのは法律で規制されていなければ従業員の健康に関しては健康診断とその要再検の人は自費で病院へ行きなさい。という指導さえやっていればOKであり、法で求められている健康診断記録に産業医のチェックを受けてサインされていれば記録を5年保管する事で社員従業員の健康管理は完璧と考えておられるご担当者が多数おられることです。例えば仕事で腰痛になった人がいても自己管理が出来ていないぐらいの対応で実はErgonomics(人間工学的)の作業姿勢教育としてPCの作業姿勢実務教育の必要性や重量物運搬教育の必要性を全く感じていない、知らないご担当者が毎日平気で問題意識すら感じておられるのか否か解らない日本の製薬工場がいくつかあることを筆者は知っています。恥ずかしい気持ちでグローバルスタンダードの必要性を意識の高い製薬企業さんにお勧めしているところです。
既にイギリスの国内法では例えばPC作業姿勢の問題で法制化されており、一日5時間以上のPC作業を従業員にさせている企業はその従業員の届出と登録を行い、教育実施記録とその教育内容に改善計画を報告する義務があります。欧米と比較するのは問題があるかもしれませんが日本が遅れていることを世界中のグローバルスタンダードを持って仕事を進めている製薬企業からは見下されていることを筆者は日本人として恥ずかしく思っています。
近い将来、日本でも事務仕事の人が物言う企業人として成長されて、健康被害を訴える時代がすぐそこに来ていると筆者は考えています。
∵国際化多様化で外国人従業員の方が先に訴えを起こすこともいい意味であり得る時代が来ていると思っています。又、日本の行政がEUの規制に気がついて、経済産業省あたりから企業に規制が始まる可能性はあると筆者は予想しています。
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