WFI製造プロせすへの思い【第11回】

2017/04/21 施設・設備・エンジニアリング

施設・設備・エンジニアリング製薬用水

 製薬用水の仕事を始めて直ぐに蒸留器に興味を持ちました。それまでの化学工学の知識から、蒸留器を精留塔などに代表される濃縮器として理解していました。
 製薬用水で注射用水(WFI)を製造する機械として蒸留器が使われることを知り、さっそく当時の薬局方を調べますと、「注射用蒸留水」という名称がありました。
 その後、WFIに含まれてはならない不純物がPyrogenであることを知り、蒸留器によるPyrogen除去性能に興味を持ちつつ仕事を続けましたが、多くのWFI製造現場で実際に蒸留器の性能を把握する機会はありませんでした。
 ところが1990年代始めに、蒸留器の性能を確かめる機会に巡り合いました。今回は、当時実施した蒸留器チャレンジテスト結果を紹介します。


1. テストの意義
 WFIに混入する可能性のある不純物の中で最も注意を払わなければならない物質はPyrogenです。生菌数もWFIとして重要な管理項目ですが、蒸発操作には加熱が伴いますから、蒸留水中には生きた微生物が存在することは皆無です。
  蒸留操作の欠点として、供給水中に含有・存在する微粒子や水滴が蒸留水に混入することを認識し、問題点として把握していましたから、この「飛沫同伴現象」の度合を評価することが、蒸留器チャレンジテストの意義と考え、微粒子を試験液に添加する案を試験項目に提案しました。

2. テスト方法
  超純水に負荷物質(エンドトキシン,不溶性微粒子)を前もって含有させた試験液を供給水とし、蒸留器を定常状態で運転し、蒸留水中のエンドトキシンおよび不溶性微粒子を測定すること。試験液に加える不溶性微粒子としてはカオリンを採用した。
1)原料
エンドトキシン:ディフコ社Lipopolysaccharide E.Coli 0111:B4,Bactro
不溶性微粒子:関東化学製カオリン
希釈水 :野村マイクロ・サイエンス㈱ 分析用超純水
2)試験液目標濃度
試験液は以下に示す数値を作成の目標濃度とした。
エンドトキシン:10 EU/mL
不溶性微粒子  :  5 mg/L
3)分析方法
エンドトキシン:比濁時間法(リムルステスト)
不溶性微粒子  :日本薬局方注射剤不溶性微粒子試験
4)運転条件
供給水量    :110~120 L/h
蒸留水量    :100~105 L/h
蒸留水温度  :95~99 ℃
加熱蒸気圧力:0.3MPa
冷却水量    :30~40L/h
Run-1  :エンドトキシンおよび不溶性微粒子を含有させた試験液によるテスト
Run-2  :エンドトキシンのみを含有させた試験液によるテスト

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執筆者について

布目 温

経歴 布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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