ゼロベースからの化粧品の品質管理【第23回】

2022/07/22 化粧品

今回はもう一度求められている機能について再確認したいと思う。

化粧品GMP手順書の作り方 ⑥最終製品1)出荷 2)保管

 化粧品の品質保証体制に関して、GMP手順書を作る際の留意事項を中心と言いつつもGMPの要求事項の解説というよりも、実際のオペレーションの留意事項を中心にお話させています。
 今回は、⑥最終製品1)出荷 2)保管 のプロセスについてお話します。
 皆さんも認識されていると思いますが、市場からの回収内容を見て頂くと“表示の間違い”や“薬事申請との食い違い”による回収理由が多いことが分かります。この状況は以前から殆ど変化がありません。検査は、それぞれのプロセスにおける“品質保証の関所”となっています。従って、出荷判定は“最後の関所”となります。“全ての通行手形が適切であったこと”、“発行された時点での手形と完全に一致すること”を確認するきわめて重要なプロセスになります。今回はあっさりと流してしまいがちな事項ですが、もう一度求められている機能について再確認したいと思います。

1.法規およびGMPの要求事項(概要)
 責任技術者は、製造所が製造した商品(バルク、半製品、製品)を製品標準書で定められた要求事項に適合することを確認し、衛生管理、製造管理、品質管理面で問題ないことを確認した後、判定を行うことが求められています。検査結果の判定だけではありません。
 特に判定の際に留意しなければいけない事項は、逸脱・変更に関する事項が適切に処理されていること、原料・材料に関する取引先からの安全性に関わる情報の有無についても適切に処理されていること等、検査結果以外の事項についても確認する体制が整っていることが必要です。
 また、市場出荷の判定は運用されているものの、工場出荷するバルクや仕掛品に対して検査結果の判定で止まってしまい工場出荷判定の形で行われていないケースがありますので注意が必要です。
 それでは、製品標準書で明確にすべき事項とは何でしょうか?

 <製品標準書で記載すべき事項>
 ① 販売名(社内管理製品名やコマーシャル名、社内管理番号も併記)
 ② 薬事許可番号・許可日、薬事届出日
 ③ 成分の名称、規格及び配合量 ④ 用法、用量、効能、効果、使用上の注意
 ⑤ 生産方法 ⑤ 製品規格及び試験方法 ⑥ 包装(構成材料一覧)及び表示内容
 ⑦ 保管条件及び取り扱い上の注意事項・有効期限 ⑧ 製造販売業者との取り決め事項
 ⑨ その他必要な事項(梱包、パレット等の積載方法)
 

2.出荷判定者
 責任技術者は、品質部門の従業員の中から出荷の可否を判定する業務を行う者(出荷判定者)を指定し、任命します。
 出荷判定者は、氏名、所属等を明記したリストが作成され責任技術者が承認し、責任技術者から出荷許可の権限が与えられて出荷判定を行うことになります。当然の事になりますが、この資格要件としては薬事に関する法規や異常を発見した際には適切な指示を出す必要があることから、単なる事務処理的な事務職員ではいけません。教育として、法規動向や業界の動向も把握するような仕組みが運用されていることも必要です。
 出荷判定者が市場出荷者の場合には、製造販売業者からの業務委託の書面と出荷判定した結果の一覧表提出等による製造販売業者への報告が必要です。工場によっては、全ての製品の出荷判定書に製造販売業者の品質管理責任者が印鑑を押しているケースがありますが、何を確認しているのか?疑問を感じます。寧ろ、出荷判定書一覧の中で、逸脱・変更事項の有無等の欄を設けて管理することの方が重要と考えます。

 <不備となりがちな事項>
 ① バルク製造を外部委託している場合、製造所としての判定結果の書類、つまり、バルクの検査結果の
   判定書以外の衛生管理、製造管理等の確認結果が問題ないことの確認結果とその記録を確認した後
   出荷判定していること。
 ② 出荷判定者が責任技術者、若しくは品質管理責任者に限定されている。この場合、実際の運営と乖離
   していることが考えられます。単に印鑑を押しているだけではないでしょうか?
 ③ 品質部門が製造記録書の内容について確認を行っていない。また、試験結果の一部、若しくは合否の
   結果しか製造部門にフィードバックされていない。

 上記事項は、ISO22716の民間認証を取得されている製造所においても徹底されていないケースを目にしました。一方、製造所の出荷判定と市場出荷判定の二段階の判定のルールは海外では必要とされていません。そのため、海外からの査察においては、市場への出荷判定とその根拠が明確にされていれば問題になることはないと考えます。
 

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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