いまさら人には聞けない!微生物のお話【第21回】

放射線滅菌における滅菌線量の決定について。
13.2 放射線滅菌における滅菌線量の決定
上項で、「自然界に存在する微生物の放射線抵抗性の分布は、過去の膨大なデータがある」と述べました。これは下表のことで、標準抵抗性分布としてISO11137-2でも引用されています。
この表の見方は、バイオバーデンとして検出される微生物において、D値が1kGy(キログレイ)以下の存在確率は65.485%、1<D≦1.5 kGy の存在確率は22.493% ・・・ という意味です。 自然界には様々な放射線抵抗性を持つ微生物が存在しますが、およそ65%はD値が1kGy以下です。中にはD値が4kGyを超えるものもいますが、その存在確率は極めて低いことが知られています。1000個のバイオバーデンの微生物群を考えると、そのうち650個はD値が1kGy以下です。220個は1.5kGy以下、60個が2kGy 以下 ・・・ D値が4.2kGyを超えるものは、0.07個ほどになります。
このデータの元々の出典は、1979年の下記の文献ですが、非常に信頼性の高いデータとして、現在でも使われています。
Whitby、J.L. and Gelda, A.K. Use of incremental dose of cobalt 60 radiation as a means to determine radiation sterilization dose, J. Parent. Drug Assoc. 1979; 33; pp.144-55
このデータを基に、初発菌数を1,000とし、それぞれの抵抗性の微生物の放射線処理による生菌数の減少をプロットすると、図11のようになります。その総和がトータルバイオバーデンの減衰曲線となります。
このグラフより、初発菌数が1000個以下の場合、25kGyの照射で10-6 の無菌性保証レベルが得られることが分かります。
では実際の放射線滅菌では、どのようにして滅菌に必要な線量を確定するのでしょうか? ポイントは当該製品のバイオバーデンの放射線抵抗性が、この標準抵抗性分布と同等もしくはそれより低い側にあることを確認することです。これが確認できれば、バイオバーデンの値から滅菌線量を決定することができます。
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