いまさら人には聞けない!微生物のお話【第3回】

細菌とは?
第一部 微生物の基礎編
1. 微生物とは
2. 微生物学の歴史
3. 細菌とは?
4. ウイルスとは?
5. 真菌とは?
6. 微生物はどこにいるか?
7. 無菌とは
8. 空気がなくても生きられる微生物
9. 腐敗とは
3. 細菌とは?
「細菌」という言葉は皆さん耳にしたことはあると思います。しかし「細菌とは何?」という質問に対して、明快に回答できる方は少ないかもしれません。
生物は細胞でできています。注)そして細胞には大きく分けて2つの種類があります。原核細胞と呼ばれる細胞核のない細胞、真核細胞と呼ばれる細胞核やミトコンドリアなどの細胞内の構造がある細胞です。単純には「下等なもの」と「高等なもの」と言ってもいいと思います。細菌はその下等な原核細胞の代表です。ちなみに真核細胞は、動物、植物、真菌などの細胞で、原核細胞に比べより高等な生物とされています。
注)細菌などの微生物から人間まであらゆる生物は、その基本単位として細胞を持っています。しかしウイルスには細胞はありません。これもウイルスが生物であるか否かの議論になる点です。
細菌は英語ではbacteria(バクテリア)と言いますが、実はbacteriaは複数形です。1個の細菌はbacteriumといいます。
細菌細胞はちょうど卵の殻のような丈夫な細胞壁で取り囲まれており、その内側には細胞膜があります。細菌は1個の個体が1個の細胞より成る「単細胞生物」で、2分裂により増殖します。1個の細胞の大きさは0.2~数μm(1μm=1/1000mm)程度ですので、1個1個を肉眼で見ることはできません。
細菌は形態的に球菌、桿菌、ラセン菌に分けられます。球菌(キュウキン)にはブドウ球菌、レンサ球菌などがありますが、ボールのような球形の細菌です。桿菌(カンキン)は、長い菌です。ラグビーボールのようなものから棒状のものまで様々なものがあります。ラセン菌は、その名の通りねじれて見える菌です。梅毒の病原体のTreponemaやピロリ菌(Helicobacter pylori)が有名です。
また細菌の中には周囲の環境の悪化により芽胞(がほう)と呼ばれる構造体を作るものがいます。細菌は芽胞の状態では増殖することはできませんが、芽胞は耐久性の細胞であり、高温、薬剤、乾燥などに対して非常に強い状態になります。芽胞は周囲の環境が増殖に適した状態になると、出芽し栄養細胞と呼ばれる増殖可能な形態になり、増殖を始めます。芽胞をつくる細菌として、Bacillus属(好気性菌)やClostridium属(嫌気性菌)がよく知られています。
さらに細菌の中には鞭毛(べんもう)や線毛(せんもう)といった毛が生えているものがいます。鞭毛は1細胞当たり1~数本生えている太く長い毛で、これは運動性に関与している、つまり細菌はこの鞭毛を使って泳ぐことができるのです。しかもこの鞭毛は、魚の尻尾のように動かすのではなく、船のプロペラ(スクリュー)のように回転させることで動き回ります。一方線毛は細胞表面に多数生えている細い毛です。これは細菌がDNAを受け渡す性線毛や、宿主細胞に付着するための付着線毛が知られています。
細菌類はまたグラム染色と呼ばれる染色法により、グラム陽性菌とグラム陰性菌に分けられます。これはデンマークのHans Christian Joachim Gramによって考案された染色法です。
この方法で細菌を染色すると、暗青色に染まるものと赤色に染まるものに分けることができます。暗青色に染まるものは「グラム陽性菌」と呼ばれ、ブドウ球菌、レンサ球菌、枯草菌などがこれに該当します。赤色に染まるものは「グラム陰性菌」と呼ばれ、大腸菌、緑膿菌などが該当します。この染色性の違いは、それぞれの細菌の細胞壁の構造の違いによります。この染色法は、現在でも微生物試験では多用されている極めて重要な操作です。

グラム陰性桿菌(大腸菌、赤)のグラム染色像
(出典:Wikipedia)
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