いまさら人には聞けない!微生物のお話【第17回】

滅菌の保証について。
7. 滅菌の保証
7. 滅菌の保証
滅菌の目的は製品や原材料などの対象物を無菌化することです。正確には、微生物の生残確率を10-6以下の状態にしたことを保証することです。では滅菌の結果それらの対象物に付着している微生物の生残確率が10-6 以下になったということは、どうやったら証明することができるでしょうか?
ある製品が無菌になったか否かを直接調べるには、無菌試験を実施するしかありません。しかし無菌試験には次のような問題点があります。
① 1/1,000,000の生残確率を確認するために、100万個の製品の無菌試験を行うことは現実的には不可能である。
② 無菌試験は破壊試験であるため、製品を無菌試験に供してしまったら、その製品は商品としての価値を失い、販売することはできなくなる。
③ 無菌試験は日本薬局方などの公定書に記載されている条件で培養を行い、菌の生育がなければ「陰性」、生育が認められれば「陽性」という判断するが、微生物の中には公定書記載の培地では生育しないものや、生育するにしても無菌試験法で規定されている日数では肉眼的に増殖を確認できないものも多数存在する。
④ 試験実施者が手作業で試験を行うため、どうしても避けられないエラーが生じる。(製品は無菌であったにもかかわらず、試験中に培地が汚染されてしまい、結果が陽性となってしまう)
⑤ 大型の医療機器では、無菌試験を行うこと自体、非常に難しい。
特に ④ の試験エラー(偽陽性)は、人が試験を実施する以上、避けることはできません。一般的に熟練した作業者がきちんと管理されたクリーンルームで無菌試験を実施しても、およそ0.1%程度は偽陽性が出るといわれています。つまり1,000個の製品の無菌試験を行った場合、その中の1個程度は滅菌済みであるにもかかわらず陽性という結果が出ることになります。これは10-6 の無菌性保証レベルと比較すると、1,000倍も高いレベルです。
この事実から言えることは、確実に滅菌された(10-6に到達した)ことを証明するためには、無菌試験は適用できないということです。つまり滅菌工程の有効性は、後工程ではどうやってもそれを証明(=保証)することはできない、ということになります。そこで統計的な意味での無菌(生残確率が10-6)を科学的に証明するための手段として滅菌バリデーションという考え方が出てきました。
ISO13485:2016には、次の記載があります。
製造及びサービス提供の過程で結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能であるか検証を実施しない場合は、製品が使用され又はサービスが提供された後でしか不具合が顕在化しないので、組織はその製造及びサービス提供の該当するプロセスのバリデーションを行う。バリデーションによってこれらのプロセスが計画通りの結果を一貫して出せることを実証する。
バリデーションでは、その前提として無菌性保証の根拠である「生残確率が1/1,000,000(=10-6)」を科学的に説明できるプロセスを確立することが重要です。 そしてそのプロセスパラメータの信頼性、再現性を検証していくことが必要です。
繰り返しになりますが、滅菌後の製品をどのように試験しようと、10-6 の無菌性保証レベルが確保されているか否かは確認することができません。そのため、滅菌工程ではプロセスバリデーションが必須なのです。バリデーションによってのみ製品の無菌性を保証できるといっても過言ではありません。
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