再生医療等製品の品質保証についての雑感【第35回】

2022/03/11 再生医療

水谷 学

ロットを形成する製品の、下流工程(充てん・凍結)から保存(保管・輸送)までのプロセスをまとめて議論します。

QbDを意識した工程設計の考え方 (7) ~ 下流工程その3

はじめに
 ここまで、下流工程における設計の考え方についてお話ししましたが、細胞加工製品は、上流工程(培養)の終了時から患者への投与までの間、作業を重ねる度に品質(細胞の生存性)が顕著に下がり続ける製品です。またそれは凍結後の保存(保管・輸送)も同様で、一連と考えます。本稿では、ロットを形成する製品の、下流工程(充てん・凍結)から保存(保管・輸送)までのプロセスをまとめて議論します。


● ロットを形成する製品の品質を確保する設計
 ここまでロットを形成する凍結細胞製品の下流工程として、充てん作業、凍結作業についてお話ししましたが、この間、製品品質に相当する細胞の生存率(バイアビリティ)は不可逆にかつ劇的に低下します。凍結製品については、機能を回復させる培養組織作製の原料として解凍後再び培養に供する可能性も将来的には考慮されますが、現状の多くでは、バッグ形態でそのまま点滴あるいはバイアルからシリンジに移し替えて注入することで、そのまま投与することが前提です。すなわち、ロットを形成する凍結細胞製品は必ず、下流工程の充てん・凍結および保存により細胞生存率が一定量低下した状態が製品の品質規格に定められます。保存は、凍結後から出荷判定がおりるまでの間と、出荷後の保管・輸送(外工程)の間も継続します。もちろん、このときの細胞生存率は、以前(第11回)に紹介したように、アポトーシスのスイッチが入ってしまった(解凍後に自殺する運命の)生細胞を除く、活性(有効性)を有する細胞のみである必要があります。

 凍結細胞製品は、下流工程の開始から患者への投与までで、図のように、上流工程が終了した時点で最大のポテンシー(P)を持った状態(P0)から、充てんおよび凍結工程を経ることで細胞生存性が低下し、ポテンシーが低減します。そのポテンシーの低減は、それぞれ、1) 充てん作業、2) 凍結作業。および3) 外工程を含む保存の作業において、一定の低減が予想されます。細胞に関わる管理すべきCQA(重要品質特性)が細胞生存性であると想定した場合、外工程の作業後におけるポテンシーが要求規格を満たすように設計を行う必要があります。

図.  下流工程の温度変動に伴う細胞生存性(製品品質)の低減イメージ

 

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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