いまさら人には聞けない!微生物のお話【第4回】

第一部 微生物の基礎編
1. 微生物とは
2. 微生物学の歴史
3. 細菌とは?
4. ウイルスとは?
5. 真菌とは?
6. 微生物はどこにいるか?
7. 無菌とは
8. 空気がなくても生きられる微生物
9. 腐敗とは
4. ウイルスとは?
皆さん「コンピュータウイルス」という言葉はご存じでしょう。 インターネットで怪しげなサイトにアクセスすると感染するとか言われていますね。コンピュータウイルスはソフトウエア(プログラム)です。それ自体は単なる 0 と 1 の集合体で、もちろん生物ではありません。そのプログラムがPCに侵入(感染)すると、様々なトラブルが発生します。つまりコンピュータウイルスは、それ自身では何もできないくせに、ひとたびコンピュータという外部の実体の中に侵入すると、まるで生き物のように活動を開始します。
本家のウイルスもその挙動はコンピュータウイルスとよく似ています。(というよりコンピュータウイルスが本家のウイルスによく似ているのですが)ウイルスの本体は遺伝情報、つまり核酸(DNAもしくはRNA)です。 極端な言い方をすると、ウイルスの本体は核酸という化学物質そのものです。 そのため、ウイルスには細胞はありません。もっとも核酸の周りはたんぱく質に取り囲まれていますが、それでも化学物質であることに変わりありません。その証拠に、ウイルスは結晶化することができます。
ウイルスは化学物質なのに、ひとたび別の生物の細胞内に侵入すると、その細胞の働きを利用して自分自身を増やすことができるのです。ウイルスが他の細胞の中で自分を増やし(合成する)、それが細胞を破って飛び出す際に、その細胞を破壊します。それがウイルス性の疾患です。
ウイルスというと、2020年から2021年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に大流行しました。そのためどうしても病原体のイメージが強いのですが、すべてのウイルスが病原性を持つわけではありません。ウイルスはおよそ3万種が知られていますが、そのうち感染性があるのは、650種ほどといわれています。
ウイルスは遺伝情報だけの物質です。 単独では何も食べませんし増殖することもできません。増殖するには別の生きた細胞が必要です。 その相手はヒト、動物、植物、魚、昆虫など何でもOKです。中には細菌にとりつくウイルスもいます。これはバクテリオファージと呼ばれています。要は、ウイルスは自分以外の生きている細胞(生物)のおかげで生きながらえている存在です。そして基本的にとりつく相手は決まっています。(もっとも人畜共通感染症のように、ヒトにも動物にも感染するものもいます)
死んだ肉(スーパーで売っている普通の肉)の場合、ウイルスはそれを利用できませんので、細菌のように肉を腐らせることはありません。ただし肉に付着したウイルスは増殖しないだけで肉のうえでしばらくの間は生きて(感染性を保持した状態)います。 そのため、十分過熱していない肉を食べると、ウイルス性疾患、たとえばノロウイルスによる食中毒、A型肝炎、E型肝炎などに感染してしまう場合があります。
「ウイルス」という言葉は日本語です。ラテン語表記ではVirus と書きます。アメリカではこれを英語読みで”ヴァイラス”と呼びます。ドイツでは”ヴィールス”と言います。
昔は、日本では医学用語はドイツ語といわれていました。そのため当時ウイルスは「ビールス」という言い方をしていました。1953年に日本ウイルス学会が設立されたのを機に、「ウイルス」という表記が日本語の正式名称として採用されています。(Wikipedia)
アメリカ人と話をするときは、「ウイルス」と言っても通じませんよ。必ず【vάɪ(ə)rəs】と発音してください。
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