再生医療等製品の品質保証についての雑感【第29回】

2021/09/10 再生医療

水谷 学

商業生産(治験後)を見据えた工程設計の進め方(治験前の工程設計)について雑感を述べる。

QbDを意識した工程設計の考え方 (1) ~ 細胞製造に要求される治験前の工程設計

はじめに
 細胞加工製品の工程設計の考え方については、本連載の開始から継続的にお話しを行ってきました。一方で、これらのお話しでは細胞製造に関わるいくつかの制限を提示していますが、製造の管理者にとってみれば、製造できる手順が構築できている前提で再現性構築および互換性に関わる議論を議論が行われているだけでした。本題では、ここまでにお話しをしたQbDを意識した細胞加工製品のライフサイクル管理の考え方を踏まえ、あらためて、製品開発段階においてCMC担当者が実施すべき、商業生産(治験後)を見据えた工程設計の進め方(治験前の工程設計)について雑感を述べさせていただきます。


● あらためて工程設計について考え、位置づけを確認する
 工程設計とは、製品を品質に結び付けるプロセスを構築する作業と位置付けられ、予め決定された品質(製品規格)を効率よく再現できる方法および手順を構築することと認識します。そのためICH-Q8(R2)では、要求される製品品質を確実にするため、あらかじめQTPP(目標製品品質プロファイル)およびCQA(重要品質特性)を決定することが要求されます。このときICH-Q11(原薬の開発と製造)の考え方では、当初のCQAとはQTPPから想定される「見込まれるCQA」であり、後々に得られる知識や工程理解から見直しを重ねることで最終的に製造のCQAとして決定されると示されています。具体的には、図のように、製剤のQTPPおよびその見込まれるCQAは、特定の工程を定め、その工程の理解が進むことで、原薬製造において見込まれるCQAが絞り込まれ、見直しを重ねることで最終的なCQAが決定されます。(PP(工程パラメータ)およびCPP(重要工程パラメータ)は決定した製造方法・手順のみに従属します。)すなわち製品の安全性と有効性から見込まれるCQAに対し、新たに設計する製造工程から見込まれるCQAを選定し、比較・評価を重ねながら製造のCQAを決定する流れであり、緑破線枠内(すなわち、治験までの製品開発段階)は工程設計から独立した形が保たれていることが前提です。
 


図.  ICH-Q11に基づく原薬製造のCQAを特定する手順の概念図

 

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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