医薬品の技術移転のポイント【第3回】

2021/06/21 品質システム

前回に引き続き、技術移転のタイプについて解説する。

技術移転のタイプ②

3)導入品の技術評価
自社が製造販売承認書取得の場合、導入段階で対応も異なります。
(1)新規開発段階;新規原薬/製剤の開発
これは新製品の開発とほぼ同じです。原薬は一般に他社ですが、製剤は他社か自社かによっても評価の難しさが変わります。
(2)海外既販売品;日本新規販売
これは既に海外で販売していますので、日本で販売して問題ないかの確認になります。
   ・処方成分が日本で認められているか
   ・日本で販売に当たり、問題となる項目はないか
 導入契約の前に品質に問題があるかどうかを確認しますが、資料は入手できず、相手先オフィスで確認をさせてもらいます。その場合、設計部門と本社QAが行って確認していました。これを十分確認していないと、後で大きな問題を抱えることになります。今はなにを置いても、承認書との齟齬がないかどうかの確認をします。また契約で大きな承認書との齟齬があれば、その負担を盛り込むような契約を盛り込んでおくことができれば、それは相手方にとっても大きなプレッシャーになり、承認書齟齬がある場合には開示されるかもしれません。原薬はMFで詳細な製造方法が開示されませんので要注意です。

4)承継に伴う製造サイト変更
 承継時の確認の基本項目は下記になります。承継品は既に日本国内の販売がありますので視点が少し異なります。
(1)品質面の確認
 ・苦情
  苦情を内容と件数を確認すればおおよその問題点がわかります。
 ・長期安定性
  将来安定性モニタリングで製品回収リスクがあるかどうかが
  推定できます。この時はデータが規格に入っているかだけで
  なく、 統計・確率的な視点で評価します。
(2)製造販売承認書との齟齬有無確認
 多くの会社が承継後に齟齬を発見しています。ところが承継してしまうと、自社の責任になり、対当局&対お客様への責任を持つことになります。「それは前の会社が悪かった」との言い訳はできません。親が亡くなり、遺産相続をしたら、莫大な負債があって最悪の場合自己破産してしまうようなものです。ただ、これを発見することはとても難しいです。お金を貸している方もお金を取りたいので、一般的な相続放棄できる3か月以内には請求せずに相続した後に言ってきます。承継する前に問題点を明確にし、承認書齟齬があれば解消(当局に報告)してもらうことです。そうすれば白馬の騎士として問題点を見つけ改善した立場になります。ですので、こちら側が十分な知識を持って調査を行うことが必須になります。
もし製造場所の変更(基本一変)が合わせて生じる場合はレギュレーション対応や新しい製造所の確認も生じます。
 製造方法が軽微変更以内
 ・過去2年以内に同じ工程でGMP適合性調査適合が実査で
  行われていると軽微変更
 ・変更が軽微変更のみだと迅速一部変更申請
 品質の確認としては一般に下記を行います。
 ・原則PV3ロット
 ・安定性試験 加速試験&長期安定性
 これらはこれまでに述べてきた内容と同じです。

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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