医薬品製造設備の洗浄バリデーション【第2回】

2012/10/01 施設・設備・エンジニアリング

3.Validationの一般要件と法規制
 洗浄バリデーションの基本コンセプトとしては、次の通りである。すなわち、「医薬品の有効性および安全性を確保するためには、承認された成分以外のものが含まれていないことが必須である。そのためには、製造環境からの異物を混入させないこと、および製造設備に付着した残留物を次に製造する品目に混入させないことが重要である。製造の残留物の次製造品目への混入は、全ての設備・機器を洗浄し、清浄化することにより防止できる。」
 
3.1 洗浄バリデーションの概要
 洗浄バリデーションの概要を下表に示す。効果的で科学的合理性のある洗浄手順を設定し、3回のバリデーション実施により検証する。対象設備、対象物質、洗浄方法、サンプリング方法、定量方法、残留許容限度値等の事項について事前に科学的な検討を行う必要がある。研究開発、実生産化の過程で、これらの事項が予め調査検討されている場合には、その基本データを活用すること。
 特に特殊な医薬品・治験薬(例えば、β-ラクタム系抗生物質、ホルモン剤、抗癌剤等のケミカルハザード物質)による交叉汚染防止のためには注意が必要である。表3に要約したが、これら特殊な医薬品と一般薬とは、人・物・設備を含め、完全に分離することが望ましい。これは、日本のGMP省令改正の他、米国の薬事コンサルタントや大手製薬企業のオーディット結果などを勘案した場合、特殊な医薬品と一般薬の設備を共用して製造又は製造委託することは、一般薬の品質保証への交叉汚染の観点から極めてリスクが高く法規定に違反すると判断されるからである。さらに、新規委託品、開発品又は海外展開するものについては、海外規制(cGMP,ICH原薬GMPガイドライン,WHO-GMP,EU-GMP,PIC/S-GMP,ICH Q8-11等)を考慮し、ホルモン剤・関連物質の一般薬及びその関連物質との製造設備共用は認めない方針とすることが良い。これは、ICH原薬GMPガイダンスに定められる特殊医薬品と一般薬の設備共用における「検証された不活化工程及び清掃手順又はそのいずれかを確立し保守する」ことを遵守した場合でも、洗浄バリデーションと残留許容基準の設定が難しく、仮に交叉汚染は無いと説明できたとしても国内当局や海外では受け入れられない可能性が高いとの理由からである。

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執筆者について

高平 正行

経歴 エイドファーマ 代表
NPO-QAセンター 理事 事務局長
1979年塩野義製薬(株)入社。製薬プラントの立上げ、医薬品製造管理者、合成研究等の製造業務を経て、品質保証部へ転出。信頼性保証本部 品質保証部 次長として、GMP統括管理、GQP品質保証業務(出荷判定、逸脱・品質不良、変更管理、苦情・回収)、国内外にある自社製品関連170箇所製造所のGQP/GMP/QMS/CMCの信頼性保証、医薬品・診断薬・医療機器製造所のGQP/GMP/QMS適合性監査などを約10年間統括する。また、医薬品医療機器総合機構一変・軽微変更、製品管理業務、国内外の医薬品品質保証ガイドライン等のカスタマイズ化にも従事する。
2011年12月より(株)エースジャパン 取締役 製品戦略担当。医薬品の原薬、中間体を中心とした品質保証、製造・試験、製造販売管理全般にわたり経営の視点から携わる。
2016年6月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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