細胞加工施設を運用するキャリアの謎【第3回】

本稿は、細胞培養加工施設と呼ばれるハードウエアに関わる人間が、出自文系という不可思議なキャリアを絡めつつ、再生医療分野についてつらつら書いている。あまり専門的な書き方はしないので、他分野の方もゆるりとお読みください。

▽侍従の苦労こそが「ケースバイケース」
 さて前回は施設管理に関わる人間を増やすべく、管理のオシゴトはこんなに素敵!楽しいよ!…とばかりの大変メルヘンなたとえをしてしまったのであるが(未読の方は第二回をご参照のこと)、思いのほかしっくりきたので、そのまま少しだけ続けたい。
 というのも、世ではお姫様を旅に出したい城が多いのか、この苦労した侍従のもとには、わりと他国の大臣や衛兵が「ハウツー」を教えてほしいとやってこられると思ってほしい。姫の安全を確保するにはどうしたら良いか。姫を無事送り出す手順はどのようなものだろうか?
 いえいえ、心配なのはわかりますが、侍従がお姫様を守る方法に「1+1」のような解はないのです。そう、侍従が守ってきたのは、あくまで「うちのお姫様」だけ。守りたければ、まかりまちがっても、よそのお姫様の話をうのみにしてはなりません。それが唯一の侍従の答えになる。
 滑る靴と滑らない靴はどれですか?という質問なら、この侍従も答えられる。しかし、滑る靴だろうがピンヒールだろうが、さっそうと歩ける隣の国のお姫様なら、もとより靴の心配などしなくていいではないか。侍従がとっても心配したのは、スニーカーをはかせても転ぶ「うちの姫君」だ。とはいえ、向かいの国のお姫様ほど睡眠時間が長くないのはとても幸い、実際の道中は短くて済む。転ぶリスクはそこである程度カバー。ただしお風邪を召しやすいので、お召し物にはとっても注意が必要――
 とまあ、要はすべては「お姫様の特性」にかかっており、侍従の苦労は、姫君の数だけ違うのである。まさしくこれが再生医療において多用される「ケースバイケース」というやつで、正解も答えもないからこそ、最適解を求めて東奔西走することが、施設管理の道となるのだということを、ここに前稿から間が開いたものの、補足しておきたい(註:間が開いた=10月はセミナーを行ったため、連載記事のほうは一呼吸おきました、という事象を指す。たぶんこれからもそうなる。ごめんなさい)。

 尽きぬ苦労をしてしまう侍従(管理者)であるが、実際慌てようが泣こうが倒れようが、お姫様は勝手に旅の一歩を踏み出してしまう、そういう時流である。だから侍従は真剣に、想像力を駆使して考えている。なにか不足していないか。確認できていない箇所はないか。未解決の問題はないか。今手に入る解決策はなにか、新しい手段はないか、もっともリスクが少ない選択肢はどれか。
 一体、なにをすれば、目の前にある問題は問題でなくなるのか?

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