洗浄バリデーションの基準となる限度値の設定についてのガイドライン【対訳・解説】

2015/07/02 製造(GMDP)

解説

 

洗浄バリデーションの基準値については、かねてより論議の対象となっておりますが、2015年6月1日付で、以前より注目を集めていた洗浄バリデーションの基準についてのガイドラインが欧州医薬品庁(EMA)から正式に発出されました。

これまで千分の1、10ppmといった基準が提唱されてきておりますが、品質保証の観点から考えますと、特に根拠がなく、無責任です。企業の責任が生じるのは外部に出す製品に対してであり、そのためには製品の中のクロスコンタミの含量のみが基準となる筈です。その点ではICH-Q3が現在までのところ信頼できるガイドラインであり、明確な基準がないということも当らないと思いますが、個別の化合物についての基準値の設定については必ずしも明解ではありません。本ガイドラインは、今春改訂されたEU GMP アネックス15の3,5章の毒性評価の記載に対応して、それを明確にしたといえます。
 

本ガイドラインでは入手できる全ての情報から得られた閾値から、科学的根拠をもって一日許容暴露量を算出することが求められています。また閾値の存在しない、即ち、いかに微量でも有害であると推定される化合物については、確率に基づいた実際的な毒性学的閾値(TTC)を設定することを基本にしております。更に基準値の設定根拠を文書化し、査察時には提示できるようにすることも求められております。
 

本ガイドラインはEUに留まらず、PIC/Sにも取り入れられると思いますが、毒性評価部門、臨床試験部門、市販後調査部門とプロセス開発部門、製造部門の連携は、現在の科学的根拠に基づくリスクマネジメントの観点から必須であり、その体制が整っていれば、今回の要求事項への対応は難しくないと思います。

本ガイドラインは新規物質の記載が多くなっておりますが、実際には洗浄バリデーションにおけるクロスコンタミの対象は既製品の場合が多く、人に対する毒性の、信頼性の高い情報は得やすく、基準値の設定に問題ない場合が多いと思います。
 

本ガイドラインの趣旨を理解し、今後の対応にお役に立つよう翻訳を提供いたしますのでご活用下さい。

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執筆者について

山本 久夫

経歴 株式会社シーエムプラス GMP Platformシニアコンサルタント
1974年サッポロビール株式会社入社。ビール製造品質管理に従事後事業多角化のため体外診断薬、制癌剤の開発を行う。サッポロビール株式会社の医薬開発事業撤退に伴い生化学工業株式会社に入社。医薬品開発業務、研究管理、薬事申請業務、品質保証業務に従事後2010年3月退職。デンツプライ三金を経て2012年3月株式会社シーエムプラス入社。国内外規制情報の収集及び解析・翻訳、申請支援等を含めGMPコンサルティングに従事。
研究開発、信頼性保証、申請業務を含めた各国当局対応を通じGMPは科学的な見地からの品質の確立につきる問題であり、医薬品の進歩の足枷になってはいけないということを実感している。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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