知的創造性を革新する組織と空間実現のメソッドプログラミング【第8回】
ファンケル社中央研究所
外観
ファンケル社は無添加の化粧品と機能性食品を製造販売行っている会社です。この研究施設は1999年に完成いたしましたが、研究所の計画を始めたのは1997年からであります。
この時点での問題は、創業から順調に伸びた成長企業がある時点に達した時、現れてくる成長の壁でありました。創業者はあらかじめこの成長の壁を予想し、それを乗り越え、さらに成長するために、革新的な製品の開発が最も重要な課題であると考えていました。そのためには新しい革新的なコンセプトの研究開発施設が必要でした。
この成長の壁を乗り越え次に目指すマイルストーンは、研究所計画時点での売り上げ、300億円強の企業を、一千億の売り上げを越す企業になることを目標としました。
研究組織は基本的にはコスメティックとサプリメントの2つのグループになりますが、創業以来全員参加の体制で開発を行ってきたわけですが、新しい研究所でもその考え方を拡大して行きたいということでした。
従いまして、実質的に、全員参加のワンファーム型の組織になっています。
この研究所は開設当初は60名程度の研究員数でスタートしましたが、目標を達成するころには120名程度に拡大する組織体制になる予想しました。研究所のスペースもそこが限界でその人数を合わせたスケールになっております。
1階、標準階の平面
では平面図を見てみましょう、左の図が1階、右の図が標準階です。
1階から説明いたしますと、1階はパブリックなスペースで、外部と研究者コミュニケーションを図る空間なっています。
エントランスホールから吹き抜けを見上げる中央の広場に入ります。
広場の周囲に打ち合わせコーナー、更に通路の外側は会議室や食堂、展示室、更衣室などの共用施設が取り囲むレイアウトになっています。右側の2階以上の標準階は、研究エリアで、中央の吹き抜けの周りはオフィスが取り囲み、さらに通路の外側が実験エリアになっています。
オフィスエリアは平面的に30メートル以内に入っています。中央のオープンな吹き抜けを通して、互いに見る、聞く、するが直ぐ出来る、即ち最高のコミュニケーションである経験の共有が出来る、一体感のあるワンルームの空間構造になっています。
断面パース
この建築は右下がりの斜面地に建っていて、地下1階、地上4階になっております。
地下は機械室、倉庫、駐車場等のサービスエリア、1階がメインエントランスなど、
パブリックエリア、2階以上が研究エリアという構成になっています。
この断面パースを見るとその空間構造が良く分かります。
中央の吹き抜けの周りは研究者のオフィスで、吹き抜けに面してガラスのないオープン状態になっています。
上部のトップライトから自然光が入り、閉ざされた内部にいながら開放感がある空間構造になっています。
上下、左右共に30メートル以内入る典型的なワンファーム型の空間構造です。
この研究所は先ほど述べましたプロトタイプの典型的例であります。
内観写真
中央の巨大なトップライトがやわらかい自然光が館内全体に注ぎ。オフィスは中心部にいながら閉鎖感のない開放的な空間になっている。さらに実験エリアとオフィスの出入りのドアは透明のガラスで実験室を通して外部を見ることができます。
この結果は当然ファンケル社の企業努力によるものですが、ワンファームの研究組織と一体化したこの空間構造も大きく貢献しているのではないかと密かに考えています。
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