知的財産の基本から知財ミックスまで【第29回】
商標の登録要件―類否
こんにちは、弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
今回は、商標の登録要件の重要な柱である類否判断について説明します。
商標法第4条第1項第11号は、先願に係る他人の登録商標と同一・類似であって、指定商品又は指定役務も同一又は類似である商標は登録しない旨を定めています。
商標類否は、対比される商標自体の類否と、両商標の指定商品又は役務との類否の両方に基づいて判断されます。
下記の表をご覧ください。自社の出願商標が、先行商標との関係において、オレンジ色で表示した部分に該当する場合は、登録を受けることができません。
1.指定商品(役務)の類否
特許庁は、審査基準上、互いに類似するものと考えられる商品(役務)をまとめ、その商品(役務)群ごとに類似群コードといわれる5桁のコードを付与しています。
例えば、商標分類 第5類に属する「乳幼児用粉乳」には「32F15」という類似群コードが付与されていますが、同一の類似群コードが、第29類の「乳製品」にも付与されています。「乳幼児用粉乳」と「乳製品」は、商標分類は第5類と第29類で異なりますが、類似群コードが同じ32F15なので互いに類似する商品と推定されます。
このように、指定商品(役務)の類否は、この類似群コードが同じかどうかにより判断されます。
上記の通り、対比する商標が同一又は類似の関係にあり、かつ、指定商品(役務)も同一又は類似の関係にある場合に、両商標は同一又は類似の関係にあると判断されます。
したがって、双方の指定商品(役務)の類似群コードが異なり、指定商品(役務)が類似していないと判断される場合は、商標が同じであっても互いに非類似の商標と判断され並存登録されることがあります。
例えば、㈱新興出版社啓林館が所有する第6024738号商標「BLUE SKY」と、ハーレー・ダビッドソン・モーター・カンパニー・インコーポレーテッドが所有する登録第6852497号商標「BLUE SKY」は並存登録されています。
前者の指定商品(役務)は第16類の「文房具類,書籍 他」(類似群コード:25B01、26A01)、後者の指定商品(役務)は「カスタムメイドされたモーターサイクルを対象とするコンテストの企画・運営又は開催 他」(類似群コード:41A01、41A03等)で、非類似の関係にあります。
2.商標の類否
実務的に審査で類否に関して争いとなるのは、指定商品(役務)の類否よりも、商標自体の類否のケースの方が多いです。
商標の類否の判断は、需要者(取引者を含む)や取引の実情を考慮した上で、需要者が通常有する注意力を基準として商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるかどうかが考慮されます。その際には、下記の要素を考慮しながら総合的に判断されます。
外観:商標の見た目が似ているかどうか
称呼:商標の読み方や発音が似ているかどうか
観念:商標が示す意味合いが似ているかどうか
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