固形製剤のスケールアップ【第6回】

2013/12/24 製剤

はじめに
 フィルムコーティングの目的には大きく分けて2つある。一つは単なるマスキングで、その主なものは苦味マスキングである。もう一つは機能性を持たせるためのコーティング、すなわち、薬物放出を制御するためのもので、腸溶性や徐放性のコーティングである。
 このうち、前者は比較的容易に行うことができ、原薬の苦味を抑えることさえできればよいので、ある程度の膜厚が得られれば問題ない。敢えて着目点を挙げるとすれば外観であり、きれいに仕上げることが出来の良し悪しの判断材料となる。
 一方、後者に関しては、機能性を付加することが最大の目的であり、これを満足させるため、膜厚の確保のみならず、膜の機能性発揮にも留意しなければならない。さらに言えば、開発段階で決めた処方量すなわち膜厚で目的とする放出制御機能を発揮させなければならない。それでも、腸溶性の付加を目的とするような場合は比較的簡単で、ある程度の膜厚を確保できればその目的を達することができる場合が多い。他方、放出制御機能を付加する場合には、単なる膜厚の確保だけでは不十分で、膜の緻密度も期待通りのものにしなければ、目的とした放出特性は得られない。スケールアップにおいてもここが一番の課題となる。

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執筆者について

服部 宗孝

経歴 個人コンサルタント(専門:固形製剤技術、レギュラトリー・サイエンス)
1970年山之内製薬(現アステラス製薬)入社。その後、生産技術研究所、製剤技術研究所勤務を経て2002年製剤技術研究所長。この間、生産技術、処方・製法開発、海外への技術導出、等を担当。2007年退社。
2008年東和薬品に顧問として入社。山形新工場の建設に係る。2013年退社。
業界活動としては、ISPE日本本部、理事、副会長、会長(2006-2007)を歴任。日本薬剤学会より製剤の達人の称号を受ける。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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