【第6回】Pharma4.0と製造現場のデジタル化施策

MESやL2システム構築におけるCSVへの取り組み

 本コラムでは、Pharma4.0スマートファクトリーに向けた医薬製造業の課題に対する当社の各種取り組みをご紹介します。大きな基盤づくりの方法論から、各種課題解決ツールまで、幅広くご紹介しますのでご期待ください。

 第6回目は、「MESやL2システム構築におけるCSVへの取り組み」と題し、垂直統合のリファレンスモデル、CSV要件への対応を分かりやすく、経験も踏まえてご紹介します。
背景も含めて記載しましたので社内教育の補助情報としてもご活用いただけますと幸甚です。

1.垂直統合のリファレンスモデルISA-95の意義と実際
 工場の垂直統合を実現するため、製造業の業務構造、モノと情報の流れ、意思決定の仕組みなどをモデル化し、複数ベンダーが関与する場合でも、同様の定義を基に各社で対話できるよう、1990年代後半に、標準規格が策定されました。ISA(the International Society of Automation:自動機器に関する国際的な標準化団体)が策定したISA-95(Enterprise-Control System Integration:ビジネス及び製造システム統合)です。
ISA-95では、企業システムや製造システムなどをドメインとして定義し、各ドメインに含めるべき業務機能を定義しています。ドメインに定義された業務機能が、ドメイン間で連携することにより相互に受け渡される情報とそのフローを定義しています。
 下図はその垂直統合を模式化したものです。

● Level4 企業経営指標、数的管理(受発注、在庫、入出庫、指図、出来高等の製造管理など)を必要とする情報を中心とした管理機能
● Level3 製造実行とその記録作成に必要な情報を中心とした機能
● Level2 製造設備・機器の監視や制御、Level0、1とLevel3との情報連携(橋渡し)機能
● Level1,0 計測を実施する設備機器
また、Level2(監視と制御システム)と下層の各種デバイスのインターフェースを一般化する規格としてOPC規格があり、ISA-95と参照・補完関係にあります。2006年以降のOPC-UAにより、それぞれの製品、OSを跨ったデータ交換を可能にする標準規格が策定されました。OPC-UA規格に則ったインターフェースを保持している製品は、Pharma4.0のスムーズな「Plug & Produce」を実現するための前提条件といえます。
今後、MESシステムの工場横展開、グローバル展開においても、設備・機器からMES・ERPシステム統合をスムーズに行うためには、グローバル標準規格に則ることが、組織への理解・浸透のための成功要因となるでしょう。
そして、現在は、Level2とLevel3の境界線があいまいになっており、管理と制御が一体となった仕組みが必要になっています。
以下に筆者が経験した一例をご紹介いたします。
医薬品製造工場での、プロセスオペレーションとメンテナンスのフローでは、製造前の製造室の清掃確認や、中間品投入後のコンテナの返却・洗浄等のなどが挙げられます。
● 自動秤量のためのコンテナ搬送と自動秤量機の制御
● コンテナ洗浄と自動搬送

これらは、搬送制御と設備制御が管理されたステータスによって自動で遷移する必要がありますから、Level2とLevel3が一体となった仕組みが必要になります。またPAT(Process Analytical Technology)を採用する際は、自動制御へのフィードバックが必要になりますので、管理と制御が一体となったモジュール化が必要となります。

 

 

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