固形製剤のスケールアップ【第5回】

2013/11/11 製剤

はじめに
 微粒子コーティングは最近の固形製剤では注目の技術である。微粒子コーティングは放出制御やマスキングのために多用される。放出制御技術は製剤の徐放化やターゲティングに必須の技術である。放出制御製剤はシングルユニットよりマルチプルユニットの方が圧倒的にリスクが小さく有利であり、そのマルチプルユニット製剤を製造するほとんどの場合に微粒子コーティング技術が用いられる。一方で、最近普及が著しいOD錠では原薬の苦味防止が大きなテーマであり、このため原薬をマスキングする技術が必要になってきている。この原薬の苦味のマスキングにも微粒子コーティングの技術が応用できる。
 微粒子コーティングを行う装置にはいろいろあるが、いずれも被コーティング物を流動もしくは転動させ、そこにコーティング液を噴霧してコーティングするもので、流動層コーティング機、ワースター式流動層コーティング機、遠心流動コーティング機、転動流動コーティング機などがある。一般の流動層造粒機を応用したものが前二者で、流動層造粒機をそのまま用いる場合は、上方のノズルから噴霧する場合は効率がよくなく、側方から噴霧する方法が用いられる。ワースター式は流動層の内部にドラフトチューブを設置し、この中にスプレーノズルを設置し、上方に向けてスプレーすることにより、ドラフトチューブ内の流速を上げ、そこに被コーティング物を誘導するものである。遠心流動コーティングは装置の底面が回転し、それによる遠心力で被コーティング物を転動させ、そこに上方からコーティング液を噴霧するものである。転動流動コーティングは基本的に遠心流動コーティングとメカニズムは似ているが、コーティング液を装置の側面から転動している粒子層内へ直接スプレーするものである。また、底面の回転盤と側面との隙間に相応の乾燥空気を送り、フィルターで浮遊粒子を回収する装置を備えているため、乾燥効率がよい。
 それぞれの装置の概要を図-1に示す。




図-1 微粒子コーティング装置

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執筆者について

服部 宗孝

経歴 個人コンサルタント(専門:固形製剤技術、レギュラトリー・サイエンス)
1970年山之内製薬(現アステラス製薬)入社。その後、生産技術研究所、製剤技術研究所勤務を経て2002年製剤技術研究所長。この間、生産技術、処方・製法開発、海外への技術導出、等を担当。2007年退社。
2008年東和薬品に顧問として入社。山形新工場の建設に係る。2013年退社。
業界活動としては、ISPE日本本部、理事、副会長、会長(2006-2007)を歴任。日本薬剤学会より製剤の達人の称号を受ける。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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