医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第47回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本国内製薬企業に必要な災害リスクアセスメントとは」


1、    製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化多様化が進む中、国際社会は日本国内企業の多様性対応が大変な遅れを取っていることをよく知っています。又、日本の製薬企業工場でも国際化多様化が求められていることは周知の事実です。当面の課題は遅れを取り戻すことですね。そんな中、容赦なく災害はやってきます。日本の製薬工場が世界中のサプライチェーンを巻き込んで構築した災害リスクアセスメントがBCM(Business Continuity Management) の効率を高めることをお話ししたいと思います。先ずは企業が健全にビジネスを継続する前提は法律の遵守です。特に改正法は毎日のように関係法令の改正が行われています。100%対応出来ている企業は無いに等しいと言うと叱られるかもしれません。しかし、簡単ではありません。なぜならこの改正法対応の情報入手からその解釈と要求事項の詳細が理解できず、間違った解釈をされてしまっているケースがあるようです。次に膨大なこの仕事を改正対応の企業としての対応プログラムを持っていない企業があまりにも多いことに驚きます。そして、十分な対応が出来ているか否かの評価をせずに担当者任せで対応出来たとして済ませていることが多いことが企業の災害の一つと筆者は位置付けています。なぜなら、製薬企業のみならず、最近頻発している違法行為の不正事件が社内告発で表面化した事例の多さに驚いています。いずれの会社も前述の法改正対応プログラムとしてRegulatory Compliance(法規制の遵守)を持った時に気がつきます。補足すると、企業としてRegulatory Complianceを構築し、サプライチーン各社に至る関連会社のマネジメントをグローバルスタンダード化出来ていて、その内容は以下のようなシステム構成になっていることが望ましいと筆者はアドバイスしております。

  • 法改正(新法も含む)の情報を対象法律(例えばHSE健康安全環境)について詳細に情報入手する。
  • 入手した情報毎に事務局にて集計表に改正概要、担当部署、対策実施責任者、実施予定完了日、対策予定内容等をプロットして社内に対策を仕掛ける。
  • 上記を日々KPI(進捗確認)にて行いながら運用し、定期的(1回/月)にGap Analysis(法改正対応不適事項分析)を行い、会社Topマネジメントのサインをもらって、社内公表する。
  • これらのリスクアセスメントを(1回/年)行い、会社TOP3に入るようなリスクの法改正対応不備事項について、社内Auditに関して外部HSEアドバイザーを招いて実施する。

さらには各種災害発生時の対応プログラムについて同様に製薬企業がその社会的責任を果たすべく今後、10年、50年、100年ビジネスを継続出来る災害対策マネジメントとそのBCM運用が不可欠ですね。こちらのプログラムも企業の業種、事業所毎、地理的条件毎に
前述のプログラム同様、先ずは行政のハザードマップや専門家の災害リスク情報の詳細情報入手からはじまり、リスクアセスメントを行い、リスクの大きい優先順位の高いリスク項目から、リスク低減対策に関して実施責任者を定めて、対策期限をKPI管理しながらリスク低減を進めて行くことが求められます。
<事業所毎災害リスクアセスメント事例>
・・・・十分な情報集めが正しい評価につながる。優先順を確認する。

<災害毎被災リスクマップ参考事例>

上記国際的なサプライチーンを巻き込んだ災害リスク対応や法改正Regulatory Complianceマネジメント構築運用をグローバルスタンダードに明記して、既存の組織も柔軟に入れ替えて働く人々の事を第一優先にビジネスを変革する事が今後10年、50年、100年と長く企業のビジネスを継続する事になる物と考えます。又、世界に受け入れられる事と考えます。

2,国内製薬企業の現状

しかし、国際化多様化を考えたとき、日本企業のグローバルスタンダード化が不適切に行われていて、EU等で起こしている問題は脆弱な日本企業の世界に対する恥ずかしいグローバルスタンダードといわねばなりません。要するに文化の異なる国で文化の異なる人材が仕事をすると違った課題が発生することは国内で考えても同じと筆者は思いますが、十分なプログラムの内容に対する検証と文化の違いをリスクアセスメントしてリスク低減対策を行わずして現地の知識ある人財に任せるというきれいな言葉で丸投げ(言い過ぎかもしれませんが)すると良い結果は得られません。機械化の進んでいる現在、コンピューターも機械です。従って、機械にやらせようとする内容は技術者がAudit等で技術情報を物理化学的に検証し、世界でトップレベルの第三者専門家に機械を使わずに検証した結果と照合して誤差が許容範囲か否かについては初めて企業のTOPが責任者として最終判断をする仕組みをグローバルスタンダードの中で担保出来ていることが重要です。AIが注目されていますが、同様に丸投げしてリスクアセスメントしなくて企業の生命を賭けるような内容の業務をやらせることはとんでもないリスクを抱えてビジネスを事故に巻き込むことは経営者としての責任大ですね。これも人的災害と考えざるを得ません。

製薬工場はただ医薬品を作れば良いのでしょうか。がんで苦しんでいる人を救うことを念じて医薬品を作っていますか。世界中で病気で苦しんでいる人のところへ届けなければなりません。いずれも他人事を思っていませんか。私達は社会的責任を負って医薬品を製造しています。世界に貢献できる仕事をして、始めて社会的責任を果たしていると言えるのです。筆者の私見ですが、日本国内の製薬会社はグローバル製薬会社に比べて遅れていると思わざるを得ません。能登半島地震で国民が学んだことは大気規模な津波で行政が制作したハザードマップで示している避難場所の5000箇所が、浸水リスクが大きいことが解りました。(日経新聞調査にて)内700箇所は5m以上の浸水可能性が大きいとのことです。この情報により、国や自治体がリスク低減対策に取り組むとの情報でした。本件に関して企業は別です。企業のことは企業でリスクアセスメントしてリスク低減対策を実施せねばなりません。出来ていますか?考えていますか?東と西に製造拠点。他社も巻き込んだサプライチェーンバックアップサイトの構築。以下の国際化多様化課題を再度ご確認下さい。

① 国際化多様化などは他人事でGMPで求められていることを行政立ち入りの際、なんとか少ない指摘で業務が継続出来ればOKとされている日本の製薬工場が多い
② 従業員の教育も定期的なGMP教育やHSE教育もここ10年以上置き去りになっている
③ 外国人従業員や障害者雇用の検討、将来計画すら出来ていない
④ 社員の年齢構成から新人の採用と育成教育がされていない
⑤ 外国人従業員に対する受け入れ体制は昔のままで門戸を開いていない或いは社内就業規則や各種社内規則が変わらず運用されている
⑥ 日本人管理職者が英語の勉強もおろそかにしていて、これを会社が容認している
⑦ グローバルスタンダードの導入の方法すら調べようとしていない
⑧ 人権尊重や人権侵害についての教育が不十分
⑨ ビジネスと人権に関する指導原則(国際法)で求められている以下の項目を学習していない
⑩ 自然災害(地震、津波、洪水、竜巻その他)人的災害(サイバーテロ、誘拐、爆発、放火その他)についてリスクアセスメントの結果についてリスク低減対策優先順位付けができていない
⑪ HSEグローバルスタンダードで自然災害や人的災害に対するBCMを構築できていない
⑫ サイバーテロのリスクアセスメントが出来ていない
⑬ 災害に被災した場合の財務上の支払い能力が無くなり、倒産という危機リスクアセスメントとリスク低減対策としての優先的製品の生産再開計画がない
⑭ 災害発生時被災による損害保険の加入が出来ていない、考えていない
⑮ サプライチェーンAuditの必要性が社内に浸透していない

 

 

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