医薬品開発における非臨床試験から一言【第49回】

2024/01/12 非臨床(GLP)

日本における薬物相互作用の規制について、今回と次回の2回でまとめてみます。

 

日本での薬物相互作用評価①

薬物相互作用評価を含めて、日本における規制要件は、厚生労働省(MHLW:Ministry of Health, Labour and Welfare)医政局を軸として、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)が、医療品・医療機器の治験審査業務、承認審査業務、及び医薬品の安全対策と健康被害救済業務を行っています。一方、規制要件を定めるときの研究などを担当し、まさにレギュラトリーサイエンスにおいて研究所の役割を担っているのが、国立医薬品食品衛生研究所(NIHS:National Institute of Health Sciences)になり、国立衛研と略します。

製薬企業の団体として、日本製薬工業協会(JPMA:Japan Pharmaceutical Manufacturers Association)があり、製薬協と略します。1968年に設立され、研究開発志向型の製薬企業71社(2023年10月現在)が加盟する任意団体になります。2023年度の事業方針は、イノベーション創出を促進する環境整備と持続可能な医療・社会保障の実現に向けた取り組みが挙げられています。医薬品規制の国際的な調和をめざすICHの創設産業界メンバーとして活動しており、研究開発部門は医薬品評価委員会に所属し、基礎研究部会(毒性、薬物動態、薬理)と臨床評価部会があります。

日本における、医薬品の相互作用の検討方法を振り返って、今回と次回の2回でまとめてみます。まず、旧通知(平成13(2001)年6月4日付け医薬審発第813号)が挙げられます。薬物相互作用ガイダンス検討グループ(座長:加藤隆一先生)により、問題の多い薬物動態学的薬物相互作用に焦点をしぼった内容がまとめられました。そして、平成26(2014)年7月8日付け事務連絡により、最終案が示されました。さらに最終案の見直しが行われ、平成30(2018)年7月23日付け薬生薬審発0723 第4号、「薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(JP-DDIガイドライン)として発出されました。

2018年発出のJP-DDIガイドラインでは、DDI(薬物相互作用)が生じる背景として、複数の薬物を処方する場合が多くなり、相互作用に注意が必要である。そして薬物相互作用により副作用や、治療効果の減弱がある。そこで、新薬の開発では、DDIを適切に評価することが示されました。薬物相互作用の評価には、基本的な検討の段階的な積み重ねと、状況に応じた的確な判断が必要となります。

非臨床試験ではDDIの発現を予測し、臨床試験の必要性を判断する。そして臨床試験ではDDIの発現の有無と程度を確認する。JP-DDIガイドラインは、具体的な方法及び判断の基準、並びに試験結果の解釈及び情報提供に関する一般的な指針を提示しています。DDI評価の目的は、臨床でのDDIを早期に判断して医薬品開発の効率化に貢献し、開発時のDDI情報を臨床現場に提供することにより、DDIによる副作用や有効性の低下が回避され、医薬品の適正使用が促進されます。

DDI試験の実施は、原則を念頭におき、薬物の性質に応じた適切な検討方法を取捨選択します。そして、必要に応じて学問や科学技術の進歩に基づく新しい検討方法及び情報提供の手段も積極的に評価し、採用すべきです。
 

 

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執筆者について

内藤 真策

経歴

兵庫県出身。元(株)大塚製薬工場 研究開発部員。
医薬品開発における薬物動態からの安全性評価を専門とし、光学活性体の薬物動態、mRNA変動による肝臓の酵素誘導、薬物相互作用などの分野に注力してきた。京都大学で学位取得。現在は信頼性の基準について議論。
製薬協基礎研究部会では長年に渡り副部会長を務め、薬物動態分野のレギュラトリーサイエンスを牽引した。徳島大学客員教授、薬物動態談話会常任幹事、日本薬物動態学会および日本毒性学会の評議員を務めている。
論文は英文97報、総説3報を執筆し、共著では「ファーマコゲノミクスの進歩と創薬科学への応用」、「代謝物の安全性評価における投与量設定と投与経路選定」、「探索段階を含む非臨床と臨床段階での非GLP 試験の効率的実施事例」など10編を数える。薬剤師、趣味は写真撮影・ドライブ。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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