固形製剤のスケールアップ【第3回】

2013/09/24 製剤

はじめに
 流動層造粒は、被造粒物である粉体を下方から送る風で舞い上がらせ、これに結合剤溶液をスプレーして粉体同士を結合させ、粒子を成長させる造粒法である。その特徴はいろいろあるが、まず被造粒物を流動させた状態で加工するため、出来上がる造粒物は嵩密度が低く、流動性がよい。またその結果として圧縮特性に優れ、打錠において高い硬度を得ることができる。さらに、造粒をクローズド系の設備で進めることができ、造粒から乾燥までを一つの設備で完了させることができる。投入、排出もグラビティフローや空気輸送を使うことにより完全クローズド化が可能で、GMPの面からも有利である。
 日本ではこのような特徴から造粒法の第一選択になることが多いが、海外では必ずしも第一選択とはなっていない。それは、設備投資の問題や高度な技術が必要とされることなどが挙げられているが、この辺りは多分に文化的な違いがあると思われる。
 
1.流動層造粒における品質に影響する条件因子
 一般に、造粒の出来を評価する造粒物の品質は、粒度分布、嵩密度、流動性であり、それらに加え、付着性、凝集性、帯電性、飛散性などが軽減できれば造粒の目的は達成できたことになる。また、品目によっては、主薬の均一な分散を期待するものがあるかもしれない。この中で多くの品質特性は相互に関連があり、特に粒度分布はすべての特性と少なからず関連がある。例えば、粒度分布がシャープになれば嵩密度は低くなり、流動性も多くの場合よくなる。また、上に挙げた付着性以下の特性は微粉が少なくなれば必然的に改善される。このように造粒物の出来を評価する場合、まず粒度分布に着目する。
 流動層造粒において出来上がる造粒物の品質、特に粒度分布に影響を与える因子は図-1に掲げる通りである。この中で、造粒物の品質に大きな影響を与える因子は、ミスト径、品温、造粒中湿潤度である。これらの3つの因子は直接因子(直接その因子を操作するもの)ではなく、他の因子を操作することによってつくられる二次因子である。しかしながら、この二次因子こそが流動層造粒の出来を支配する重要なものである。



図-1 流動層造粒における造粒物の品質に影響を及ぼす条件因子
 

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執筆者について

服部 宗孝

経歴 個人コンサルタント(専門:固形製剤技術、レギュラトリー・サイエンス)
1970年山之内製薬(現アステラス製薬)入社。その後、生産技術研究所、製剤技術研究所勤務を経て2002年製剤技術研究所長。この間、生産技術、処方・製法開発、海外への技術導出、等を担当。2007年退社。
2008年東和薬品に顧問として入社。山形新工場の建設に係る。2013年退社。
業界活動としては、ISPE日本本部、理事、副会長、会長(2006-2007)を歴任。日本薬剤学会より製剤の達人の称号を受ける。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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