ゼロベースからの化粧品の品質管理【第27回】

2022/12/09 化粧品

今回は「規格外品の処理手順」に関する事項について解説をする。

化粧品GMP手順書の作り方 ⑧規格外品の処理手順

 化粧品の品質管理についてお話させて頂いており、今回は⑧規格外品の処理手順についてお話させて頂きます。第25回で手順書に盛り込むべき事項についてはお話させて頂きましたので、今回は違う切り口でお話させて頂きます。
 グローバル対応として、化粧品の製造所においてもISO9001の認証取得をされている企業が多くおられます。今回は、そのようなISO9001の認証を取得されている化粧品製造所が、ISO22716 の民間認証を目指される際に、混乱を起こしがちな事項であるISO9001の『不適合品の処理手順』と、ISO22716 の『逸脱管理手順』および『規格外処理手順』の違いを中心にお話します。
 これらの手順書の最終目的は、市場に提供する化粧品を“お客さまの要求に適合するモノとして提供すること”です。そのために、最終的な製品だけでなく、使用する原材料、バルク、仕掛品に対して品質水準を満たしていることを客観的に評価し、確実にする仕組みであることが必要です。そこで、品質水準を確保するために、各プロセスで起きている事象に対して、どの『管理手順書』をどのように適用していくのかを整理したいと思います。
 個別の手順書を作成する中で十分理解している方も多いかと思いますが、今回はISO9001の手順書が整っている会社を想定して、ISO9001の『不適合品の処理手順書』の視点からGMP手順である『規格外処理手順』についてお話したいと思います。

1.    製造プロセスにおける品質状態と管理手順

①    化粧品の生産において、作業は作業手順書や作業指示書により規定された手順や作業方法に基づき行われます。その過程において、機械の操作方法や装置の状態、作業者の作業方法について、正常な状態で作業が行われているのか確認を行いながら工程を進めます。 その過程において、手順書等の手順への記載の有無に拘らず何時もと違う場合には、『逸脱管理手順』に従い対応を行い、品質への影響調査を行います。その後、品質への影響がないと判断されたモノは、経時フォローが実施され、出荷判定を行い、品質水準を満たし、問題無いと判断されたものは適合品として扱われます。

②    これに対して、試験検査の結果で規定された規格に適合しない場合には、『規格外品管理手順』に従い処理します。 この手順においては、試験検査担当者の作業ミス、測定機器の故障、校正不良の可能性も考えられます。従って、規格外の結果が出た場合には、先ずは、“試験検査の逸脱の有無を調査すること”が必要です。若し、逸脱があった場合には、『逸脱管理手順』に従って処理します。 逸脱が無かった場合には、再サンプリング、再試験を行い、不合格かどうかの判定を行う手順になります。その後、不合格品が確定した場合には、“不適合品”として処理することになります。 ③ ISO9001での『不適合品管理規程』は、市場に出荷後の顧客からのお申し出品を中心の手順で、出荷前で要求された品質水準を満たさないと確定されたものに対しても対象として、不適合品の影響を調査、そのものの処置、是正処置、再発防止を行う手順となります。従って、『逸脱管理規程』では求められている品質水準に対して規格水準を満たしている場合もありますが、『不適合品管理規程』では規格水準を満たしていないことが確実になったものが対象になります。

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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