ゼロベースからの化粧品の品質管理【第26回】

2022/11/11 化粧品

今回は「規格外(OOS)管理書」に関する事項について解説をする。

化粧品GMP手順書の作り方 ⑭内部監査

 前回は、⑦品質管理試験室の中で気になっていた事項の「規格外(OOS)」についてお話しました。今回は、⑦から一気に飛んで⑭内部監査に関する事項を取り上げました。
 なぜ、一気に話題が飛んだかと言いますと、前回お話しましたが、ある化粧品会社を見せて頂いた際に、ISO22716の要求事項の記載項目だけに囚われており、品質リスクの視点が抜けているように感じたからです。
 ここの会社は、ISO22716の民間認証を取得されているすばらしい会社で、ISOの要求事項に対して漏れもなく、要求事項に対して体制は整っています。勿論、ISOの認証機関の審査員の先生からの内部監査に関する指摘は今まで受けていません。しかし、内部監査の本来の目的は、内部環境や外部環境の変化に対して既存のGMP体制を確認、適切に体制を適応させること、また、運用している既存の仕組みの中で品質問題が発生しているならば、従来の体制の仕組みの不備について体制の不備を指摘し、是正すること、PDCAサイクルが上手く回っていることを確認することが重要なミッションと考えています。そこで、内部監査の進め方について、今回は皆さんと確認したいと思います。

1.内部監査の視点で重要なこと

GMP体制を整えることは、『高い品質の商品を市場に継続的に届ける』ことです。
従って、
① 製造所においてそれぞれの作業が効果的に行われていること
・品質方針、品質目標に対して、維持、向上している状態になっているか?
② GMPで定めた仕組みが効果的に機能していること
・それぞれの仕組みが品質の安定、効率化に寄与しているか?
これらのことをチェックし、会社の業績に貢献していなければなりません。
品質トラブルが減れば、失敗コストが減ることで原価低減に繋がりますし、品質の向上は顧客満足の向上にも繋がり、売り上げにも長期的には寄与します。
 

2.内部監査でのチェックのポイント

①    パーフォーマンスが安定、向上しているか?
②    現場の作業や品質活動に役立っているか?
これらのチェックを主眼として行うことが重要です。

 しかしながら、定められた手順や標準書に基づいて行われていることのチェックを主眼にチェックを行うこと、特に、標準書と実作業との整合性、記録類の記載についてのチェックを行い、毎回、同じような指摘を行うことでは内部監査が機能しているとは言えません。監査に慣れた監査員は鼻が利きますので、見なくても指摘事項が分かってしまい同じような指摘を行います。例えば、組織や担当者が変更になった場合に文書の改訂が行われていない箇所がある等です。このような内部監査が行われていることを目にしますが、これでは、内部監査により品質が維持、向上する仕組みになっているとは言えません。
 

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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