医薬品の技術移転のポイント【第13回】

2022/06/24 品質システム

前回に引き続き、技術移転時の品質トラブル事例について解説する。

9)コールドフォームのピンフォール
コールドフォームは両面アルミのPTP包装です。コールドフォームやアルミピローではピンホールチェックがとても重要になります。
 ・シールの不備
 ・アルミフィルムの亀裂
 ・加工の不備
生産の立ち上げ時はIPCでピンホールの確認頻度を高め、早期発見が重要とコンサルを行い、理解してもらいました。ところが本国の指示で、1回/1ロットになっていました。偶然、QCの抜取試験でピンホールが見つかりました。もし、QCの抜き取り試験で偶然見つからなければ、後日製品回収になっていたかもしれません。

販売名:***細粒2%  製品回収
対象ロット  数量及              出荷時期
6      60,024個     平成31年4月8日~令和元年8月9日
回収理由 2019/11/21
当該製品における直接包材であるヒートシールのシール不良が複数発見されたため、不良の可能性があるすべてのロットを自主回収いたします。

包装工程の品質に関係するコールドフォームやアルミピローは防湿性を確保するためにとても重要です。なぜ1年4か月もわからなかったのでしょうか? それを防ぐにはモニタリングシステムを高めることだと思います。

10)S製薬の胃薬にドーピング薬混入…レスリング選手のドーピングで発覚
洗浄バリデーションの基準は下記の一番厳しい基準となっています。
・10ppm以下
・0.1%以下
・目視確認
ところが、138 ロットを調査した結果では全ての原薬ロットから0.1ppm ~7.6ppm(平均値:1.1ppm、中央値:0.8ppm)のアセタゾラミド(ドーピング禁止薬剤)が検出されています。つまり、GMPで求めている基準より1~2桁厳しい基準がドーピング薬については求められていることが分かったのです。原薬製造所では、これまで抗がん剤や高薬理活性の薬を造っているか、アレルギー物質を兼用していないかなどを確認していましたが、これからはドーピング薬を製造していませんか?を質問事項に追加する必要があります。この事例まではドーピング薬のことを全く考えていませんでした。このような他社の事例を通して学び、あたかも自分たちの知識のように活用することができるかが問われています。そして同じ問題が発生することを防ぎます。
 また、報告書を見ると、目視確認できるレベルのスパイクテストを原薬製造所で行っていませんでした。行っていないことは原薬製造所の問題ですが、それを確認していなかった製販の品質保証も実は問われているのです。逆に言えば、製販がこれから学んでスパイクテストの確認をする必要があるのです。

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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