再生医療等製品の品質保証についての雑感【第27回】

2021/07/09 再生医療

水谷 学

キット化の実現に向けて生じる課題の再整理と、解決に向けた方向性について。

工程設計に必要な追加工程の設計(3) ~ 原料等あるいは工程資材をキット化できる可能性

はじめに
 細胞加工製品の製造工程で導入を行う原料等あるいは工程資材のキット化については、以前(第8回)に原料等・工程資材の管理の考え方として触れました。総論として、生産管理の効率化においては非常に有用な方法であり、生産量が一定以上の施設においては是非導入を検討すべきと考えますが、一方で、導入に向けて解決すべき課題も少なくないと認識します。そもそも薬機法下で実現するにはどのように対応すればよいのでしょうか。本稿では、キット化の実現に向けて生じる課題の再整理と、解決に向けた方向性について雑感を述べさせていただきます。


● あらためて、キット化の意義と課題を整理する
 少なくとも現状の細胞加工製品の製造の多くでは、調達(契約・購買管理)において入手可能な原料等あるいは工程資材の単位(試薬の容量、容器の入数など)と、各工程において使用するために要求される単位は、同じではありません。そのため、予め工程ごと、その必要量/数に応じて、図の事例1に示すように、試薬類では分注/合一、工程資材では内容あるいは入数を変更する再包装の要求が想定されます。我々は、これらの一連の作業をキット化と呼んでいます。キット化の作業は、各工程前の準備操作とも認識できますが、購買した原料等や工程資材を特定の工程時に細胞調製室に導入し、残量を他工程のためにキット化調製を実施し再び資材保管室に戻すことは、動線から生じる交叉汚染防止や指図時に生じる混同防止の観点より、細胞加工・操作に直接関わる主たる工程(以下、主工程と呼びます)を実施する時間帯を避け、設備の空き時間に集中的に実施されることが多いと認識します。いわゆる治験薬GMPなどでは、「試薬調製室」において実施すべき無菌調製ですが、アカデミアのCPCなど、年間製造数の少ない細胞加工施設では試薬調製室を設けず、細胞加工の工程管理において生じる設備の遊休時間にこれらの作業を実施することが一般的だと思います。


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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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