ドマさんの徒然なるままに【第19話】

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第19話:ボクはCOVID-19ワクチン

ボクはCOVID-19ワクチン。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかない。と言うより、まだ生まれていない。言えることは、世界中の研究者と製薬会社が必死でボクを生もうとしていて、世界中の人々からの期待を一身に背負って誕生が待ち望まれてるってことかな。

ボクはワクチンっていう種類なんだけど、感染予防のためなんで、かかってしまった患者さん救済のための親戚も同時に生み出そうとされてる。親戚さんは、治療薬っていう種類で、かかってからの症状緩和や治癒担当なんだ。ボクたち二人が力を合わせれば結構強いと思うよ。

似たような敵の仲間にインフルエンザっていうのがいるんだけど、いくつかのワクチンや治療薬があるんだ。ただ、ワクチンについては、せいぜい1年間くらいしか持たないし、毎年敵がAチームだとか、Bチームだとか、チーム編成して攻めてくるんで、それを予測して毎年違った組み合わせの兄弟で守ってるんだ。結構大変な作業なんだよ。今流行っている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)*1、このインフルエンザによく似たコロナウイルスっていう種類なんだけど、初めてヒト感染に遭遇したことや、感染率が高いということで、世界中が焦ってるんだ。しかも、こいつ、若い方よりもお年寄りや基礎疾患を持ってる方には無茶苦茶悪さをする、とっても嫌な性格なんだ。超ワル、最低だよ。

でも安心してよ。ボクが生まれた暁には、みんなを守ってあげるから。世界中の研究者と製薬会社が協力して進めれば、ボクの誕生日は早まるはずだよ。安全だってことが確認されれば、他の仲間よりも早産だっていいよ。みんなが喜ぶんだったら早産で生まれても、一気に成長していくから。

それに、ボクが生まれれば、続いて弟か妹が直ぐに生まれて来る。ボクらの家系って、多産系で、弟や妹はボクよりもっと強いことが多いんだ。すごい一家だろ。理由があるんだ。ボクが生まれることで、ボクの良いところを弟や妹に生まれる前に伝えることが出来るんだよ。世間の人は、それを改良とか言ってるみたいだけど、ボクの性格とパワーが、もっと良い形で引き継がれていくってことかな。だから、ボクの誕生が大事なんだ。エッヘン!

ボクのご先祖様は、マジ凄かったんだよ。ちょっと古いけど、エドワード・ジェンナーっていう人が天然痘っていう病気に対してボクのご先祖様を発見し、その後にルイ・パスツールという人がクスリにしたんだよ。その後、色んなウイルス感染症に対して、様々なお爺ちゃん・お婆ちゃん、そしてお父さん・お母さんが生まれ、それまで不治の病とされていた病気を片っ端からやっつけてきたんだよ。だから、今回の新型コロナウイルスだって、へっちゃらさ。任しておけって! 

考えてみてよ。たまたま想定外の新種のウイルスによるパンデミックが起こったということで世界中があたふたしてるけど、世界には新型コロナウイルス感染以外にも、山ほどの病気がある。それは今でも、そして今後も続く。むしろワクチンのボクからすれば、敵の正体が分かっているだけ相手し易いんだよ。

ボクら、クスリって言われる仲間たちの多くは、原因不明と言われている病気まで相手せざるを得ないんで、すっごく大変なんだよ。正体不明の相手、しかもウイルスや微生物のような外から侵入してくる敵とは限らない。自分の身体の中で問題が発生する場合もある。どういう場合や状況であっても、みんなを守らなきゃならないからね。仲間たちも戦々恐々としてるのが実情だよ。

ボクの場合は、当初はともかくとして、現在では敵となるコロナウイルスのDNA型はもちろんのこと、その性格も読めて来てる。だからボクと治療薬の二人がかりで予防と治療をすれば、何とかなるし、さらに将来的には絶滅させることだって不可能じゃないよ。敵もさることながら、ころころと変異して逃げ回ろうとしているみたいだけど、ボクらのパワーはあいつらよりも上回っていくから。そう、ドラクエのようにパワーアップしていき、最後には平和な世界を取り戻すのさ。

そうそう、ボクの役目は、きみらの免疫っていう防御機能をアップさせて抗体っていう武器を作ることの先導的立場だから、きみらが自分の身体の中の兵隊作りに参加してくれれば、なおさら助かるよ。えっ、何をすればいいんだって? 簡単だよ。健康に注意してくれればいいだけ。よく言うじゃない。健康管理とか、免疫力アップだとか。それだけでも十分なサポートさ。

今はまだワクチンも治療薬も無いのでバタバタして、「新しい日常」なんて言われてるけど、それって特別なことをするわけじゃないよ。感染予防として当たり前のことをすればいいだけさ。確かに不便さを感じたり、以前はやらなかったなー、なんてこともあるかもしれない。でも、それって今般の新型コロナウイルスのパンデミックにより、今まで忘れていた注意を喚起させただけなんじゃない。季節性イルフルエンザだって、本来はやるべきことなんじゃない。GMDPと同じさ。当たり前のことを当たり前のこととしてやるってこと。出来ないんじゃなくて、してないだけなんじゃないの? えっ、耳が痛いって!? この際、言い訳なんか止めて、普通はするよねー、って変えちゃえばいいだけさ。それが「新しい日常」の本来の意味だと思うんだけど。どうかな? 

まして今般の新型コロナウイルスのパンデミックが終息したとしても、その後にだって、別の新種のウイルスが発生することだってある。ウイルスだけじゃなく、微生物感染だってある。そういう意味では、「もし●●が起こったら」としたリスク管理が必要なんじゃない。そして、「万が一、▲▲になってしまったら」として危機管理も検討しておく。それは個人レベルから政府レベルまで色々とあるはずだよ。漠然とボクの誕生を期待するんじゃなく、生まれるまでの間の、そして生まれた後での対応を準備しておかなきゃダメだよ。ボクだってスーパーマンじゃない。だから、みんなの注意と予防が重要なんだ。みんなが手洗い・うがい・マスク・三密回避といった出来ることをやってくれることが、ボクの役目をサポートし、ボクの効果をアップするんだから。ちょっとした協力だけで有効な味方になるから、お願いだよ。

治療薬は、それでも突破して侵入してきた敵を後方支援部隊としてやっつける。ただ、それだって完璧じゃないからね。ボクらワクチンや治療薬に期待を寄せるのはいいけど、頼り過ぎは危険だよ。それは、「俺は感染なんかしないから」って、知らないうちに感染して平気で他人にうつしている愚かなおバカさんと同じだよ。そんな奴になりたくないだろ。だったらボクらに協力してくれよ。そのちょっとした「うつしたくないから、うつされないように注意する」という協力だけでかなり減らせるはずだし、それが基本だよ。

「世の中捨てたもんじゃない」って思いたいじゃない。いや、今だって「世の中捨てたもんじゃない」はずなのさ。ただ悪いことばかりが強調されるんで、勘違いされてるだけだよ。だって、みんなの努力で、色んな病気のおクスリが開発されてるじゃないか。COVID-19ワクチンのボクだって、単にその一人にすぎない。ただ、もうちょっと待ってね。もうすぐだからさ。それまで、感染が拡がらないように注意してね。感染に注意を払うことは、ボクの誕生より重要だし、ボクが生まれた後だって同じだよ。

親戚の治療薬も頑張るから、そっちが生まれれば、そっちの力も借りてね。ボクとそいつとは、絶対に仲がいいから。お互い生まれる前になるけど、テレパシーで分かるんだ。リモートワークのレベルしゃないよ。超々リモートなんだ。凄いだろ。これがボクらの仲間意識、「人類を救うんじゃー!」という最強の武器なんだ。

ただ一つだけお願いがあるんだ。たとえ、世界のどの国の、どの製薬会社から生まれたとしても、世界中の患者に使ってあげて欲しい。えっ、お金がかかるって? 確かにね。でもさ、人類が一致団結して世界をそして地球を救えば、お金はどうにかなるよ。さらにさ、今後も世界中で協力して、まだ見ぬウイルスに対する新たなワクチン開発に繋げて欲しいんだ。相手が変異しても、突然発生したとしても、いつでも対抗できるようにさ。そうすれば、ボクは世界防衛軍の先駆けになれるし、続いてボクの兄弟たちが立派に仕事を成し遂げられる。そのためにも世界中の研究者と製薬会社が協力して世界を救うのさ。かっこいいだろ。じゃ、よろしくね!


本話、専門的な内容でも新規的な内容でもない。医薬品品質の話でもなければ、GMDPについては皮肉込みの一言が入っているだけでGxPの話でもない。GMP Platform読者の多くは医薬品関係者であると思われるため、当たり前すぎて面白くないであろう。それでいい。ただ、医薬品に対する知識や情報をあまり持ち合わせていない一般の方が目にすることも在り得るだろう*2と考え、「第7話:ボクはおクスリ」の姉妹編といった雰囲気で執筆してみた。筆者としては、毎日のように報道される新規感染者数や死亡者数に振り回されずに、一方で悲観的にも楽観的にもなり過ぎず、感染症とそのワクチンや治療薬について少しでも理解を示して、適切な自衛策を図ってもらいたいという思いだけである。


では、また。See you next time on the WEB.


【徒然後記】
この数年、ハッピーと感じるニュースをあまり見かけない。幼児虐待だとか、感情的あるいは無差別的な殺人、あおり運転、さらにはSNSにアップしたいだけの信じられない迷惑行為や誹謗中傷、中にはコロナ差別もある。道徳感や倫理感が低下してしまったのか? 人間性そのものが低下してしまったのか? いや、そうじゃない。良い人は沢山いる。ほとんどは良い人だ。悪い人が増えたわけじゃない。だから世の中が悪くなったわけじゃない。単にニュースバリューとして視聴者の気を引くために質(たち)の悪いものを取りあげているためか? 新型コロナウイルスで気分が晴れない、先が見えない、そんな状態だからこそ、前向きでホッとする内容に会いたい。こんなバカな気持ちになるのは筆者だけだろうか。
そんな中、本年6月8日に大好きなお婆ちゃんのいる天国に旅立った青森県鯵ケ沢町の秋田犬「わさお」に「犬(けん)民栄誉賞」が授与されるというニュースが。“ブサかわ犬”と称されながらも、意に介さずといった姿が思い出され、ほのぼのとした感覚に癒されるのは、私だけだろうか。
《注》本徒然後記は、2020年7月30日に執筆しています。

 
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*1:新型コロナウイルスの正式名称は「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型:Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2(SARS-CoV-2と略)」で、COVID-19は「SARS-CoV-2感染症」としての病名のことです。
 
*2:(天の声)一般の人が読むわけないじゃろーに。こんなウェブサイトがあるなんてことさえ知らんわ。
(筆者)大きなお世話じゃ!
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