医薬品GMP理解の第一歩【第1回】

1.はじめに

新しくGMP関連の業務を担当されGMPの世界に踏み出された方々、あるいは日々GMPに取り組んでおられる方々に、品質システムという観点に基づいてGMP理解のひとつの糸口をご提供することを目的に、今回から連載として解説を試みたいと思います。
一般にGMPは守らねばならない基準として見なされる場合が多いように思われるのですが、そういう視点ではなく、筆者はGMPを医薬品の品質を保証するシステム(品質システム)であると見なすことが重要と考えています。この連載を通して品質システムの考え方を述べたいと思いますので、皆様方のご参考になれば幸いです。

2.品質システムの考え方 

 それでは、医薬品の品質を保証する品質システムとは何なのでしょうか。「椅子を作る」という作業を例に考えてみましょう。
 あるところに高名な椅子職人さんがおり、その手によって芸術的な椅子が完成したとします。すばらしい! 工芸品の椅子であればそれで十分でしょう。しかし、言うまでもなく医薬品の製造は工芸品作りではありません。医薬品の製造に即して椅子作りをチェックすると次のようになります。
 ①職人さんが使用する治具(ノミやノコギリ、電動ドリルなど)が適切に作動する
  ことは確認されましたか(適格性の検証)?
 ②それらの治具の使用手順や椅子作りの作業手順(SOP)があり、それに従って作
  業を行いましたか?
 ③職人さんはSOPやその他の必要事項の教育訓練を受け、教育記録はありますか?
 ④椅子作りを開始するにあたって、計画書があり、それは責任者によって承認され
  ましたか?
 ⑤作業中に発生したトラブル(逸脱)や計画書からの変更は記録され、必要な対処
  がなされましたか?
 ⑦出来上がった椅子の品質が規格に照らして問題のないことを職人さんの所属とは
  別の部門(品質管理部門)が第三者の立場で確認しましたか?
 ⑥椅子の完成後に報告書を作成し、それは責任者によって承認されましたか?
 ⑦以上の作業工程全体に問題ないことを職人さんの所属とは別の部門
 (品質保証部門)が監査として確認しましたか?
 というような具合です。少しでもGMPの心得のある方なら、すぐにご理解をいただけると思います。
 この例でお示しした①から⑦のような手順が「品質システム」なのです。つまり、“いいものができた!”だけでは品質を保証したことにはならず、それ(物づくり)が「品質システム」の上で実施されたということが品質保証の要点なのです。換言すれば、「製品そのものの品質」と「品質システムが問題なく機能していること」が車の両輪のように結びついて初めて製品の品質が保証できるわけです。筆者はそれこそがGMPの本質であると考えています。
 製造現場では、例えばプロセスバリデーションで逸脱が発生しバリデーションが不適合となっても、“出荷試験は適合で品質に問題がないのだから出荷しよう。”と短絡的な意見が聞かれることもあるかと思います。しかし、製品品質自体に問題がなくとも、バリデーションという品質システム上の重要事項に問題があれば品質は保証されたとは言えず、この見地から出荷はできないと考えるべきなのです。
 このような品質システムを考慮した品質保証の考え方の基本はISO9001にあります。

 

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