医薬品,医療機器滅菌の新しいトレンド“放射線滅菌”【第1回】

はじめに
 GMP 3原則のひとつに「医薬品に対する汚染および品質低下を防止する。」があります。この原則を実現するためには製品の微生物汚染を防止する必要があり、その方法の1つが滅菌です。すなわち、滅菌の目的は製品及び包装材料に付着している微生物(バイオバーデン)を殺滅または除去し、バイオバーデンによって患者が感染等の不利益を被ることを防ぐことにあります。そして、製品の無菌性は、従来行われてきた無菌試験に代わり滅菌バリデーションによる保証になり、滅菌工程の妥当性を科学的に検証することによって滅菌を行うことが必要になってきました。
 また、充填/包装後の最終製造工程において滅菌処理を行うことは、製品の無菌性保証をより確実なものにします。医療機器では主に湿熱滅菌、エチレンオキサイド(EOG)滅菌、放射線滅菌が最終製造工程に実施され、無菌医療機器の物量では半数以上が放射線滅菌に、続いてEOG滅菌,湿熱滅菌となっています。一方で、様々な問題から、無菌医薬品では一部で湿熱滅菌が行われているものの、多くは無菌操作法,ろ過滅菌により工程内で無菌性を保証する方法が取られています。
 そこで、本稿では、医療機器の放射線滅菌を紹介するとともに、将来、放射線滅菌の利用が進むと考えられる無菌医薬品の二つの実例と導入時の問題点及び対応方法、そして海外の滅菌事例について説明します。さらに、滅菌バリデーデーションを構築する上で重要なバイオバーデン管理、環境微生物管理についても説明します。最後に、滅菌によって製品の無菌性を科学的に検証、保証するには何が問題で、また何をすべきか解説したいと思います。
 

 

1. 医療機器の法令、規格基準
 国内において、医薬品、医療機器などの薬事関連製品の製造及び販売は、医薬品医療機器等法、GMP省令、QMS省令により規制され、さらに通知、事務連絡、ガイドラインなどにより運用されます。
 現在、医療機器の滅菌に関しては、平成26年12月8日に改正された滅菌バリデーション基準や各滅菌法のJIS規格,関連ISO規格で運用されています。すなわち、製造販売業者又は製造業者は滅菌バリデーションを適切に実施し、QMS省令に基づく滅菌医療機器の適切な製造管理及び品質管理を実施しなければなりません。滅菌バリデーションの実施に関しては、滅菌バリデーション基準に規定されている下記の3滅菌法についてJIS規格が発行されています。また、滅菌に関連したJIS規格も発行されています。

     EOG滅菌              JIS T 0801 -1: 2010
     放射線滅菌             JIS T 0806-1,-3: 2010
     0806-2: 2014
     湿熱滅菌              JIS T 0816 -1: 2010

     最終段階で滅菌される医療機器の包装 JIS T 0841 : 2009
     医療機器の生物学的評価       JIS T 0993-1 : 2012
     エチレンオキサイド滅菌残留物    JIS T 0993-7 : 2012
     製品上の微生物群の測定法      JIS T 11737-1 : 2013
     無菌性の試験            JIS T 11737-2 : 2013
 

 さらに、滅菌に関連したISO規格(一部)は下記の通りで、必要に応じてJIS化が検討されます。

     ISO 17665-1-2: 2006  ヘルスケア製品の滅菌-湿熱-
     ISO 11135: 2014    ヘルスケア製品の滅菌-エチレンオキサイド-
     ISO 11137-1,-3: 2006  ヘルスケア製品の滅菌-放射線-
     ISO 11137-2: 2013   ヘルスケア製品の滅菌-放射線-
     ISO 11138: 2006    ヘルスケア製品の滅菌-生物指標-
     ISO 14161: 2009    ヘルスケア製品の滅菌-生物指標-
     ISO 11140-1: 2014   ヘルスケア製品の滅菌
                      -化学的インジケーター-
     ISO 11607-1-2: 2006  最終段階で滅菌される医療機器の包装
     BS EN ISO 14971: 2012 Medical devices Application of risk
     management to medical devises

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