【第10話】医薬品品質保証こぼれ話 ~旅のエピソードに寄せて~

執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話

 

“セルフメディケーション”の重要性

昨年(2024年)の日本への外国人観光客の数は、11月時点でコロナ禍前を上回る3,337万9,900人、また、年末年始に海外に旅行した日本人は過去最高の約52万人と推定されています。ウクライナやイスラエルの戦争、また、様々な感染症の流行により世界中が悩ましい状況にあるにもかかわらず、このように、世の中はまさに旅行ブーム真っ盛りといった状況にあります。この要因としてはいろいろなことが考えられますが、世界中で高齢化が進み、健康な高齢者が増えていることもその一つではないでしょうか。そのせいか、近隣の観光地でも海外からの高齢者の夫婦や団体の観光客を以前に増してよく見かけるように思います。

こういう状況の中、先般、2023年の日本人の平均寿命が発表されました。それによると、女性が87.14歳、男性が81.09歳で、コロナ禍により死者数が増加した過去2年以来、3年ぶりに男女ともに平均寿命の延びが見られたとのことです。また、これに合わせて、平均寿命と健康寿命の差が減少していることも確認されました。今年(2025年)はすべての団塊の世代が75歳以上となり、日本人の5人に一人が後期高齢者となりますが、旅行ブームに相まって高齢者が旅に出る状況が増えれば、さらなる健康寿命の延びが期待され、これにより、2025年問題と言われる医療や介護の逼迫の問題も緩和され、同時に医療費の抑制につながるかも知れません。

この医療費の問題に関しては、本連載の第9話でも取り上げましたが、年末年始よりテレビのニュースをはじめ様々なメディアで報道・議論されることが多くなっているように思います。医療費の継続的な増加の原因は、第9話でも触れた国の施策や医療のあり方に加え、後述の国民の健康管理への意識の問題も大きく関係していると考えられます。このことは医薬品の使用(量)にも関係し、ひいては、いま問題となっている医薬品不足にも影響してきます。薬不足の原因は、製薬会社の生産・品質保証体制の問題と見なされていますが、事はそれほど簡単ではなく、これ以外の様々な要因を含む構造的な問題と認識し、対策を講じる必要があることは繰り返し述べてきているとおりです。

さて、医薬品不足が深刻さを増す中、インフルエンザが猛威を振い、抗ウィルス薬、咳止め薬、解熱剤など必要とする医薬品が入手できないことが、連日テレビ報道され大きな社会問題になっていますが、これに対する有効な対策が未だ見出されていないのが現状です。その一方で、様々な国からの観光客が激増し、日本ではこれまで見られなかった病原性ウィルスを含む多種多様な感染症が、時期を問わず海外から “輸入”される状況となっています。この状況を見て、“自分の健康は自分で護る”ことの重要性を感じられた方は少なくないのではないでしょうか。

 

 

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