WFI製造プロせすへの思い【第19回】

2017/12/09 施設・設備・エンジニアリング

はじめに 
 WFIの原料水となる精製水に内在する問題点を整理します。WFIを汚染させるリスク要因は、前工程から侵入するという考えに基づきます。
 日本では多くのWFI製造現場で、精製水としての水質項目を確認した後、これを原料としてWFIを造ってきました。イオン交換塔やROなど精製水をつくる装置とWFIのために使う蒸留器や膜分離とを、はっきり区別してきたのです。
 先ず、脱塩目的の装置で精製水を製造し、次に、微生物とPyrogenを排除する目的からWFIを製造する流れ(プロせす)になります。「プロ」の段階でいったん立ち止まり、「せす」へ進む確実な流れです。
 微生物管理された精製水を、無菌化(微生物を排除する行為)が求められるWFI装置へ通水することを徹底して、日本では既に四半世紀を越えました。
 
1. 欧州薬局方パブコメ内容
 2017年4月より有効になった欧州薬局方WFI製造法改訂に併せて発出されたパブコメ集やQandA集の内容を閲覧すると、脱イオン用として設置されたRO装置内で発生する微生物汚染として象徴的なバイオフィルム発生を強調し、この根絶に多くの紙面を割いております。
 この記述内容は、日本では精製水製造段階で対応済みですが、あたかも、non-distillation methods のみに不可欠な対策のように記述されているのです。
バイオフィルムの発生は、精製水装置の後段が蒸留器であっても避けねばなりません。ですから、EU当局が2017年4月の薬局方改訂の後に発出されたパブコメ集とQandA集に、non-distillation methodsに対して、必須条件としてバイオフィルム発生対策を記述していることへ違和感を持っています。
 むしろ、蒸留器であるならば、前段でバイオフィルムを発生させても良いような誤解を、与えてしまうことを危惧します。
 日本では、微生物管理された精製水から蒸留器や膜分離(RO/UFなど) によってWFIを製造してきた実績があります。EU当局がこだわるバイオフィルム発生源について整理しておきます。バイオフィルム発生源は、精製水装置内に多くあります。

2. 精製水製造装置
 精製水を製造する装置は3つあって、それぞれ脱イオン機能を備えています。ところが、この脱イオンされた水は、水道水のように殺菌剤である残留塩素を含みませんから、精製水を使う用途では、微生物汚染に注意する必要があります。
 微生物が生育するのに必要な栄養素が少ない純水中にも微生物が存在することが明らかになっており、この微生物がタンクや配管中で増殖すると、微生物の塊であるバイオフィルムが発生するのです。
 バイオフィルムが発生すると、発生箇所の後段で間欠的に、著しい微生物数が検出されるようになってきます。ところが、精製水を末端でサンプリングしても、常に、著しい微生物が検出される訳ではありません。季節が変わって水温が低下すると、検出されない状態が続くこともあり、このためバイオフィルム発生の発見が遅れ、対応が後手後手になる傾向があり、これはやっかいです。

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執筆者について

布目 温

経歴 布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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