医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第52回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「GMP・HSEは専門技術、人的資本投資が不可欠 」


1.製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。日本国内外にて製薬工場で働く日本人も外国人も夫々の工場でGMPやHSEの専門技術スキルを習得することでその職務を発揮することが出来るようになります。さて、ここで必要となるのが人的資産投資(個人が持つ能力、スキルや知識)であり、企業はこの人的資本投資をせずしてGMPやHSE(健康安全環境)の専門的な技術を習得する事は出来ません。ましてや製薬企業に求められる社会的責任はGMPの品質のみならずHSEの専門技術です。更にこれらのコンプライアンスを重視した技術的運用が出来なければなりません。その為にはGMPHSEの関係法令と関係国際法を重視した運用が出来る専門知識が備わっていて初めて適切な工場内生産活動が可能となります。

さて、この基本的な運用を行うには現場担当オペレーターに日々移り変わる技術的な課題を理解する能力、スキル、知識が備わっていなければなりません。マニュアル通り作業をするだけでは達成できないのです。これらを担保するには先ずは企業の社員、従業員(間接雇用、派遣、アルバイトとこれらの外国人従業員)等にお金をかけて技術レベルを担保する為の人的資本投資を行わなければなりません。

2.国内製薬企業の現状

しかし、世界各国と比較すると日本の現状は直近30年間、バブルがはじけた頃以降この人的資本投資がおろそかになっていました。これには歴史的に見ると、1990年代のバブル崩壊を契機に日本企業はリスクを恐れるようになり、雇用を守る事を最優先する人事制度のもと人員削減をさけ、過剰雇用を抱き込んでしましました。そして賃金を据え置くことで人件費を抑制してきました。これにより人的投資がされないことで日本人の技術力が低迷し、生産性が停滞したと考えられます。これを世界的に見ると日本企業全体の競争力を弱めてしまったと考えざるを得ません。同様に日本の製薬企業の製薬各工場では他社がやっていないのだからいいだろうとかやむを得ないとかという低次元の判断基準がはびこり、会議の席でも平気で「他社がやっていないから」などの発言が行われてきたことを否定する有能なマネジメントがいなかったのでしょうか? 

この30年間の人的資本投資がおろそかになった事がサプライチェーン全体で同様の有様であったこともあり、日本の製薬企業全体のチームとして技術力の低下が近年になって明らかとなり、世界の中で置き去りになってしまっている現状を直視せざるを得ません。

大切な課題・問題点を筆者の持論ですが以下に列記します。これらが改善されないと今後何年たっても世界の理解が得られる様な技術レベルの高い日本と言う認識は世界から取り戻せないでしょう。

  • 物事を判断する際、技術力のない人は「他社がやっているから」という発言をすること。

    物事は物理化学的な根拠で協議して判断基準とする技術力が必要であるにもかかわらず上記の発言を平気でする人がいて、その発言を否定する人が居ないこと。
  • SOP、マニュアルが無い場合や記載されていないことで身動きがとれない人がいること。

    医薬品工場の生産業務関連業務のオペレーターや管理者として設備保全技術や機械・電気の技術が不足していること。
  • GMPやHSEの専門用語を知らない人がいること。

これでは、GMPやHSEのオペレーション技術や品質試験を物理的科学的な根拠で適・不適の判断をする事や工場で働く人の健康被害リスクコントロールする事には能力・スキル・知識が不足する事で人為的ミスや合否の判断ミスなど解らないまま日々生産活動をする事になっているおそれを感じざるを得ません。

これらの人的資本投資リスク低減対策をサプライチェーン共々実施している日本の製薬工場はまだまだ少ないと聞いています。
 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます