【第12回】デジタルヘルスで切り拓く未来

「人工知能のE L S I」


●要旨
 進化を続ける人工知能について私たちはよく考える必要があります。シンギュラリティを思うとき、人間と人工知能の位置づけを考えさせられます。人工知能は私たち人間が作り出しましたが、ELSI(Ethic, Legal and Social Issue )をもとにじっくり考えましょう。医療においてのリスク、人工知能の作られ方、判断が分かれた時の対応など色々な課題があります。変化していく社会において、医療における人工知能の大きな効果が期待される一方で、向き合う姿勢も問われています。

●はじめに 気になるシンギュラリティ(技術的特異点)
 本連載では、幾度か人工知能について触れています。その人工知能ですが、本連載の間にも進化しています。半年も経てば、高性能のものが出てきて、さらに、人間に馴染みの良いものになってきているように感じます。そして私たちの暮らしの中に、人工知能(以下、A Iと記します)を活用することが増えています。例えば、「ホテルでの滞在に関する質問は、A Iコンシェルジュが対応します」という表示をよく見るようになりました。ホテルは、ホスピタリティのサービスが重要です。病院における過ごし方に通じます。A Iとの壁打ちも一般化してきています。筆者も業務において考えを広げる際にAIにいくつか質問をしてその答えを見ながらブラッシュアップすることがあります。また描画のレイアウト自動化は、本当に便利です。
 しかし、A Iとどう向き合うかはまだまだ課題がありそうです。先日、京都で変人学会が主催した「ヘンポジウム」の第2回は、A Iと変人がテーマでした。進化するA Iの時代に、人間が変革をするマインドを持っていることがとても大切だと感じました。特にシンギュラリティに関するところです。A Iが人間の知能を超えていくのか、逆に人間が劣化するのか。いささかショックな視点ですが、「A Iが言ったから」と判断を全て委ねてしまうようでは、考える力を失ってしまいそうです。最近はそのようなことを感じることがあり、いかにA Iと向き合うかが問われていると思います。

<図表> 超えるって、どういう意味?

1 私たちはE L S Iと向き合ってきたか
 A I、つまり人工知能は、どこまでいっても人工のものです。私たち人間が作り出しました。そこに倫理観があるかどうかが大切です。倫理観を考えるキーワードとして、ELSI(Ethic, Legal and Social Issue )を覚えておいてください。この3つの要素のどれが欠けても、向き合うことにはなりません。私たち人間が考えること自体がまずは重要です。その先に、社会実装があります。
 人口減少が激しく、社会の維持にかなりの問題を抱える日本においては、効率化が不可欠です。しかし、すべてをA Iに委ねようということではありません。A Iを使って効率を良くして社会の問題を切り抜けて、もっと良い未来を作っていきたいのです。デジタルヘルスには、その機会がたくさんあります。しかし、人間には様々な面があります。行動変容のために自ら身を律するタイプの人もいれば、身を律するのにきっかけが必要な人もいます。さらには、強制的にしなければ困難な人もいます。人間は一律ではない中で、協同するにはどうするか、人間を知る必要があります。A Iの研究は、人間を知る機会でもあります。
 A Iには、速い計算、たくさんのデータが扱えるという人間を超える能力があります。しかし、最初のきっかけは、人間が決めていく必要があります。どんなデータから学習させるかを決めることが分かりやすいでしょう。そのデータの持ち主は誰で、意思はどうでしょうか。A Iを用いる診断機器、システムの開発ガイダンスや評価指標においては、学習用と検証用を分けることを求めています。これは当然です。実は評価というのはとても人間的な行動です。

 

 

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