いまさら人には聞けない!微生物のお話【第40回】

特定菌試験、混釈培養について。
14. バイオバーデン試験
バイオバーデン試験はISO11737-1 に詳しい解説がありますので、それを参照してください。
バイオバーデンは、滅菌の項でも説明しましたが、滅菌前の製品に存在している微生物のことです。正確には付着菌数、その種類、滅菌工程に対する抵抗性などを含みますが、ここでは製品に付着している細菌と真菌の生菌数ということで説明します。
バイオバーデンを測定するには、① 製品からの付着菌を抽出する、② 抽出した菌を培養する、③ コロニーのカウントを行う、の3段階の作業が必要です。
①の付着菌の抽出には、ストマック法、振盪法、ホモジェナイザー法などいくつかの方法がありますが、ここではその概要のみ記述します。対象製品の材質、形状、構造などを考慮し、当該製品に最適な方法を採用します。付着菌の抽出に際しては、抽出効率を上げるため、可能であればハサミなどで試料をバラバラに切断します。しかし金属や硬質プラスチックの製品では切断することが難しいため、そのままの形状で処理を行います。
たとえば注射筒のようなものであれば、製品をガラスビンに入れた抽出液に投入し、それを振盪機で振盪して抽出を行います。チューブやガーゼのようなものであれば、切断が可能ですので、試料を細切し、それを抽出液と共にストマッカーバッグに入れ、ストマッカーにて抽出を行うなどします。
使用方法はそれぞれ異なりますが、これらの装置を用いて、製品から付着菌を抽出します。抽出に用いる液は、分散剤として0.1%程度のTween80を添加したペプトン水、生食水、緩衝液などが用いられます。
ここで重要なのは、付着菌の何%が抽出できているかということです。これを適正に評価し、自社の方法がどの程度信頼できるかを把握しておく必要があります。これは「バイオバーデン測定方法のバリデーション」として ISO11737-1 に記載されていますので、それを参照してください。
製品が異なれば、バイオバーデン試験の操作も変わります。自社製品に合わせて適切な方法を設定することが必要です。なお大型の製品では、1個の全量を試験に供することが難しい場合があります。その際は、製品の一部を取り、そこから付着菌を抽出し、バイオバーデンを測定した後、その切り取った部分の比から全体を推測する方法も取られます。
培養は細菌用としてはSCD寒天培地、真菌用としてはサブローデキストロース寒天培地がよく使われます。
なお自動化が進んだ工程で製造された製品は、一般的にバイオバーデンのレベルはかなり低いため、数mLの抽出液を取って寒天培地で培養しても、ほとんどバイオバーデンが検出できない場合があります。そのような場合は、抽出した液全量をメンブランフィルターでろ過し、そのフィルターを寒天培地上に置き、培養後にフィルター面上に出現したコロニーを計数します。
また簡易的な方法として、特にガーゼのような薄い繊維製品などでは寒天培地の上にその製品を置き、さらにその上から溶解した寒天培地を重層し、それを培養する寒天重層法と呼ばれる方法もあります。
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