基礎からのGPSP【第3回】

2023/04/21 その他

調査ガイドライン①。

~調査ガイドライン①~

はじめに
承認時に、製造販売後の安全監視体制をどのように設定するか、医薬品リスク管理計画で示す必要がある。再審査に向け必要な資料を作成するという目的も踏まえ調査・試験は、薬剤特性に応じ計画されるものである。しかしながら、それぞれの製造販売業者が薬剤特性に応じて種々の調査・試験を設定することは難しく、一方、受ける側の医療機関や調査・試験の結果を評価する行政当局も種々な対応に苦慮することになる。そのため、一定の手法を示し標準化を企図し、結果についても標準的に評価できるものとして示された調査ガイドラインに基づき調査・試験が実施されてきた。
 
1. 経緯
再審査申請資料作成のための調査・試験等の実施方法につき、ガイドラインが示される以前 
は、未知の副作用や発現状況の変化を把握することを主な目的とした新医薬品等の使用等の成績を集積することにより、安全性評価を一律に実施していた経緯があった。しかし、製造販売後調査の目的を踏まえ、真に必要な品質、有効性及び安全性に関する情報を収集するためには、当該医薬品の特性に合わせた製造販売後の調査・試験を計画し実施すべきではあるが、一定の手法の標準化を図るために、ガイドラインとして示されたもので、学問の進歩等を反映した合理的根拠に基いた方法であれば、ガイドとして示した方法を固守したものではないとしている。また、現時点では具体的なガイドラインは示さずに、計画の策定に関する検討の進め方を示すにとどめている。
 

(1) ガイドライン制定まで
1) 10,000例の症例収集 
再審査制度が昭和54年(1979年)より制定・施行され、再審査申請のための情報集積が大々的に開始された。これまでにおこなわれていた副作用定期報告のために実施されていた調査より、調査期間が長期化し6年間であることから、とにかく沢山集める、未知の副作用も十分集められるように、稀にしか報告されないような副作用も把握できるようにとの考えで、「10,000症例位は集めなければ」との方針が立てられ、「0.01%の発現頻度の副作用も把握し、種々の副作用発現頻度を把握し安全性情報を確立する」との理由がつけられた。また、承認された適応症の有効性が市販後の使用実態下でも十分に確認できるかについても調査し、承認内容の評価もすることとされていた。
 

2) 再審査申請開始と調査方法の検討 再審査の申請が本格化し、種々の調査結果が報告されその実態が明らかとなってきた。すなわち、「期待しただけの情報が得られていない」との結論のもと、一定限の情報が得られるような市販後調査方法とはどうあるべきかの検討が必要とされ、行政当局と製薬企業により
• 本間研究班による調査方法の検討
• パイロットスタディによるトライアル
が開催・開始され、市販後調査実施方法に関する検討が本格化し、平成3年にその検討結果が全て報告された。
 

(2) ガイドラインの提示
これまでの検討結果並びに調査実施の企業への聞取調査や実地調査の結果を踏まえ、製造販売後調査の実施方法の一定の手法が示され、標準化(少なくともこのくらいはとの)が企図され、実施されることとなった。症例数の設定により10,000症例の収集、事前登録によるプロスペクティブな調査対象の選定、副作用の発生状況を把握するなど安全性評価に焦点をおき、有効性はむしろ無効症例の把握に努めることとされた。
1) 10,000例の症例収集
0.01%の頻度で稀な副作用を1例でも検出するために10,000例以上の症例による使用成績調査を実施することが、原則的に求められることは継続されたままであった。したがって、製品によっては再審査期間中には予想される使用症例数が少なく、6年間で10,000例を収集するためには、全例調査を設定せざるをえなかったり、期間終了間際になってくると、症例数を少なくするための相談や、変更計画の提出が必要となったりもした経緯があった。
 

2) 製品に応じたガイドライン
安全性に焦点をあて、未知の副作用の発現を考慮し0.01%の稀な副作用症例の把握に拘泥するのではなく、95%以上の信頼度で0.1%以上の頻度で発現する副作用の把握とし、むしろ症例抽出のや無作為化経年的な副作用の発現の変化を把握したりと、科学的根拠を持った計画的な調査の実施を求めたガイドラインが示された。これにより製品特性に応じた特別調査の充実と検証のための市販後臨床試験の指針が示された。
 

3) 市販直後の安全対策と使用成績調査の意義
重大な副作用の発現により、販売中止や重大な使用上の注意の改訂が、承認までに集積されたわずかな安全性情報に基き一般臨床で使用が一気に開始される市販直後で多く見られた。このため、直後の重点的な安全性監視及び情報提供が必要とされ、新医薬品において、販売開始直後の6ヵ月間にわたる監視、市販直後調査が開始されることとなった。一方、これまで一律に実施されていた使用成績調査は製品特性により、その実施意義を検討し、実施の要否も含め、適正な症例数の設定のうえ、計画・実施が求められることとなった。
 

 

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執筆者について

草間 承吉

経歴 医薬品、医療機器、医薬部外品等の開発から製造販売後までの安全確保業務を黎明期から30年以上にわたり幅広く経験・管理・監督してきた。この間、業界活動においては製薬協PMS部会や東薬工医薬品安全性研究会、日薬連安全性委員会等でDSUやPMS担当者研修講座の設立等にも関与した。これらの経験を生かし15年前にPMSフォーラムを設立し、製薬企業等からの業務相談に対応しながら、指導・教育に努めている。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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