医薬品のモノづくりの歩み【第12回】

「モノづくりカルチャー」と「クオリティカルチャー」

 今回は、米国で提唱され、日本でもその醸成が強く求められるようになった「クオリティカルチャー」と、「モノづくり技術立国」の日本の企業文化として培ってきた「モノづくりカルチャー(モノづくり文化)」とは、明らかに同一視できるものであるのかを、その背景に触れながら解説します。
 図1に示したように、これまで医薬品製造では「品質は工程で作りこまれる。」という「モノづくり」の精神が、しっかり企業の中に根付いていました。
良いものを作ろうとする姿勢とQCD+SEを意識した製造現場の風土が、企業風土、企業文化としても、しっかり受け止められていました。(図1に左図)
その後、医薬品産業がグローバル化と厳しい開発競争にさらされる中、薬機法改正とジェネリック薬進展も相まって、企業の製造に対する関りが希薄になると共にコスト低減や納期必達への偏重が、品質やコンプアイアンスに対する意識を低下させ、GMP違反や不正・不祥事を招くことになったと言えます。その結果、企業文化として根付いていたモノづくりの精神が損なわれ、改めて品質第一とする「クオリティカルチャー」を企業文化として醸成するよう求められるようになりました。(図1に中央図)
このクオリティカルチャーの醸成の取り組みは、改めて品質意識を第一義に捉え、 GMPを順守してより適正な品質の医薬品を、いつでも必要な量を、より安く、安定して供給するため、組織が一体となって現場力を発揮する、正にモノづくりの精神に基づいた、元来のモノづくりの文化、「モノづくりカルチャー」を企業文化として醸成することに他ならないと言えます。(図1の右図)

図1 「モノづくりカルチャー」と企業文化の変遷

 

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